専門医コラム

多剤耐性緑膿菌とは

研究班は、きわめて多くの種類の抗菌薬に耐性を持つ多剤耐性緑膿菌による角膜炎15件（同じ人の両眼に起こった場合は延べ2件と数える）を報告しました。

緑膿菌は普通の環境に住み着いている細菌で、健康な人に感染して病気を起こすことは少ないですが、例えば抗がん剤を使っている場合など、免疫を抑える治療を受けている人では問題になります。

また、緑膿菌は抗菌薬に耐性ができやすいことでも知られています。耐性菌の治療には、耐性がない種類の抗菌薬が使われますが、多くの種類の抗菌薬に耐性がある細菌に対しては、選択肢が少なくなってしまうのです。

7件で治療成功せず

15件の概要を以下に転記します。

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13人の患者の15の眼を対象とした。患者のうち7人（53.8%）が男性であり、9件（60%）が左眼の病変だった。

15件の単離病原体のうち、6件（40%）がイミペネムにのみ感受性であり、3件（20%）はコリスチン、2件（13.3%）はネオマイシン、1件（6.7%）がイミペネムとコリスチン、1件がイミペネムとセフタジジム、1件がアジスロマイシンに感受性だった。1件はすべての抗菌薬に耐性だった。完全な治療成功は2件（16.67%）、部分的な治療成功は3件（25%）、治療失敗は7件（58.33%）で起こった。5件（33.3%）の眼はイミペネム（3件）、アジスロマイシン（1件）、イミペネムとコリスチン（1件）で治癒した。

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角膜炎を起こした緑膿菌は、15件のうち12件では抗菌薬のうち1種類しか効かないものでした。1件では、すべての抗菌薬に対して耐性がありました。残念ながら治療に抵抗して角膜移植などが必要な状態に陥った例が7件ありました。

適切な抗菌薬の使用を！

医師は必要なときにだけ、適切な種類と量の抗菌薬を処方します。薬を受け取った患者さんは指示通り服用し、医師は患者さんが正しく飲んでいることを確認して処方を調整します。もし、何らかの理由で処方された抗菌薬を飲んでいなかった場合は医師に正直にお伝えいただくことは重要です。医師が効果がないと判断してしまうと、必要以上に抗菌薬が増量されてしまうことが有りえるからです。どのような薬にも言えることでしょうが、患者さんの正直な申告がご自身の薬の副作用を防ぐことにも繋がります。

もちろん、その方専用に処方された薬ですので他人に飲ませないことが必要と言われています。

新しい種類の抗菌薬が作られても、使い方が適切でなければ、次々に耐性菌が現れ、急速に広がっていきます。打つ手がない事態を防ぐために、抗菌薬の適切な使用が医師、患者双方に求められます。