専門医コラム
2016/02/10
糖尿病網膜症! 自覚症状がないまま進行、最悪の場合、失明に・・・
2012年の厚生労働省の調査によると日本国内の糖尿病患者数は約950万人と推定されています。おそらく2015年では1000万人を超えていると思われます。
この同じ調査で、その患者さんのうち治療を受けている方は約65%と報告されています。つまり、糖尿病であることに気付かないでいる人や、気付いていても治療をしないでいる人が、いかに多いかを示しているのです。
糖尿病は自覚症状が少ないためにこのような状況となっているのですが、放置していると、やがて全身にさまざまな障害を起こすのが特徴であり、恐ろしい点です。
糖尿病の誘因
糖尿病は加齢のほか日常の生活習慣が誘因となって発病するので、「生活習慣病」といわれています。残念ながら糖尿病の患者数は年々増え続けています。その理由は、現代社会そのものが糖尿病を増やす生活習慣を生みやすい構造となっているからです。
食べすぎ、運動不足、ストレス、アルコールの飲みすぎなど、どれをとっても現在増え続けている事柄で、外食産業の隆盛や自動車社会の繁栄、肥満の増加、ストレス社会など、糖尿病を招きやすい条件はたくさんそろっています。
また、これらの生活習慣にかかわる誘因とともに、糖尿病の発病には遺伝的な素因も深く関係するといわれ、血縁者に糖尿病の人がいる場合にはとくに注意が必要です。しかし後天的な原因での家族内発症では、食生活の共有が大きな原因となっていることは否めません。なお、加齢や生活習慣とは関係なく発病するタイプの糖尿病もあります。
血糖異常を何故起こすのか?
血液中の血糖上昇が糖尿病の病態で、単に血糖が高いだけでは何も自覚症状は認められません。この自覚症状の少なさが、身体だけではなく、目も初期は自覚症状がほとんどないのです。自覚が少ない、これが糖尿病の危険なポイントです。
何故血糖が上がるのか? インスリンは膵〈すい〉臓で作り出されるホルモンで、細胞が血液の中からブドウ糖を取り込んでエネルギーとして利用するのを助ける働きをしています。インスリンの作用が不足すると、ブドウ糖を利用できなくなり、血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高くなります。これを高血糖といい、この状態が継続するのが糖尿病です。
インスリンの作用不足には、膵臓のインスリンを作る出す(インスリン分泌)能力が低下してしまうことと、インスリンに対する細胞の感受性が悪くなることの二つの原因があります。
糖尿病網膜症 糖尿病三大合併症の一つ
糖尿病の恐ろしさは、自覚が少ないうちに三大合併症を起こして日常生活に大きな支障をきたすことです。
自覚症状がないからと糖尿病を放置していると、高血糖は全身のさなざまな臓器を障害します。
とくに冒されやすいのは、神経と血管を中心とした臓器で、神経障害、眼球の網膜に出血する網膜症、腎臓の機能が低下する腎症の三つが起こりやすく、これを三大合併症と呼んでいます。
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気です。網膜とは、目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、脳への視神経に伝達する組織で、カメラでいうとフィルムのはたらきをしています。
糖尿病網膜症は、定期的な検診と早期の治療を行えば病気の進行を抑えることができますが、実際には日本の中途失明原因の代表的な病気です。
糖尿病網膜症の症状は、病気の進行とともに変化します。
- 初期の段階では、まだ自覚症状がみられません。しかし、目の中の血管の状態をみると、小さな出血など、少しずつ異常があらわれています。
- 中期になると、視界がかすむなどの症状が感じられます。このとき目の中で、血管がつまるなどの障害が起きています。
- 末期になると、視力低下や飛蚊症が起こり、さらには失明に至ることもあります。目の中で大きな出血が起こる、あるいは網膜剥離や、緑内障など、他の病気を併発している場合があります。
次回は糖尿病網膜症の予防と治療についてお話しします。
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