専門医コラム
2015/08/22
こどもさんの遠視、目の成長不足
(資料、参天製薬提供)
視力低下に関して近視は良く知られています。しかし、遠視については意外と詳しく知られていません。中には、”近視は悪い目、遠視は良い目(遠くが比較的良く見えるため)” と捉えている方も少なくありません。もちろんこれは大きな誤解です。視機能としては遠視の方が子どもさんにとっては大きな問題となる場合も多いのです。
遠視の原因
子供の遠視は、多くは眼の成長不足が原因です。上記のように、眼の奥行きが短くて、角膜・水晶体で屈折した光が結像する前に網膜に届いてしまい、ピンぼけになる状態です。『目の小人症』と私は患者さんに説明しています。
子供の眼は発育途中では、眼球の長さが十分伸びていません。したがって、子供の遠視はめずらしいものではありません。しかし、眼球の成長不足のまま放置されると、弱視や斜視の原因になるので注意が必要です。
目の成長不足
人の目は生まれたときには視力はほとんど無く、光がわかる程度です。
網膜にピントの合う光が繰り返し届くことによって、網膜は視細胞(光を捉えるフイルムの役割)の発育とともに成長し、視力が発達します。 遠視があると、正しい像が網膜上で結ばず、網膜の視細胞としての発達が未熟になってしまいます。(視性刺激遮断性弱視・光刺激遮断性弱視)
近視の場合は、遠くの物体にはピントは合いませんが、近いところにはピントが合うので弱視はあまり発生しません。(強度の乱視や斜視を伴う場合を除く)
また、遠視があると、常に休む間もなく「調節」という力を働かせて、網膜上に正しい像を結ぼうとします。本来、「調節」は近いところを見るときのピントあわせのために働く力なのですが、遠視の場合は遠くを見るときにも使わないと明視できません。
この「調節」と、眼を内側に回旋させる「輻輳」という力は相互に関係しあっており(近見反応といいます)、調節が起こると眼を内側に向けようとする力が働きます。
したがって、遠視があると余計に「調節」を強いられる分、「輻輳」も余計に働きますから、眼が内側を向いてしまうことになります。(調節性内斜視)
調節と輻輳のバランスがとれずに、常に、あるいは間歇的に眼が内側を向いている状態もしばしば起こります。(内斜視)
どちらのケースでも、斜視があると、両方の眼が協調して働くことが出来ず、遠近感や立体感といった両眼視機能が得られないことになります。