専門医コラム

2018/01/05

糖尿病薬を長く使うほど網膜症を起こしやすくなる!?

糖尿病薬を長く使うほど網膜症を起こしやすくなる!?

前回のコラムでご紹介した橋爪勝先生の指摘される「糖尿病治療の問題点」について今回はお伝えさせていただきます。

糖尿病治療法の問題点

現在の保険診療による標準的治療は、患者さんの状態によって異なりますが、

① 食事のカロリーコントロール及び運動

② 数ヶ月で血糖値が下がらなければ経口血糖降下薬を使用

③ 薬を使用しても血糖値コントロールが難しくなるとインスリン注射を検討

といった流れで治療が行われます。

この中でも医療行為である②と③を使った治療が長ければ長いほど治りにくくなる、と橋爪先生は述べています。医療行為である治療を行う方が、3大合併症、眼科で言えば失明の原因として重要な糖尿病網膜症を起こしやすくなるというのです

そう聞くと、「そんな馬鹿な!」と驚かれる人が多いでしょう。

薬は治すために使用するのであって、薬で病気を悪化させるなんて有りえない・・・とお考えになることも、ごく自然なことだと考えます。

ではなぜ糖尿病治療の医療行為が、例えば糖尿病網膜症の発症を後押しする可能性が高いのか、それぞれの治療法に隠された問題をお伝えしたいと思います。

糖尿病治療 食事療法の盲点

糖尿病治療法の問題点を考えるにあたり、現在の保険診療による標準的治療は、

① 食事のカロリーコントロール及び運動

② 数ヶ月で血糖値が下がらなければ経口血糖降下薬を使用

③ 薬を使用しても血糖値コントロールが難しくなるとインスリン注射を検討

であることをお伝えしました。

食事療法の考え方

多くの場合「エネルギー摂取量」を問題視します。

例えば、日本糖尿病学会編の「糖尿病治療ガイド」では通常一日の摂取量を男性では1200~1800キロカロリー、女性では1200~1600キロカロリーの範囲とします。

ここでの盲点は、総摂取カロリーのコントロールですと、摂取エネルギーは同じでもその質に差が出てしまうのです。

例えば、ごはんばかりを1500キロカロリー摂取する人と、肉ばかりを1500キロカロリー食べる人。極端な例ですがカロリー数値は同じでもその内容は全く異なることは理解いただけると思います。

数字も大切ですが、その内容を管理した方が良いと思われます。

そもそもカロリーを制限する食事療法が簡単ではないことは多くの方が経験されているでしょう。食事制限、には、多くの場合ストレスを伴います。ストレスもなく出来るのであれば、肥満に悩む方は存在しなくなるでしょう!?

満腹感が得られるまで食べてはいけないとなると・・・。精神的にも肉体的にも辛いことです。私の経験上、1週間我慢すれば、その後はそれ程食事制限にはストレスを感じにくくなるのですが、1週間の食事制限は多くの場合長すぎるという感覚なのでしょう。空腹感に耐えきれず、我慢のタガが外れて通常の倍も食べてしまうような “リバウンド” 経験者も多いでしょう。

入院して管理してもらうと、糖尿病食メニューとして厳格に管理可能です。しかし、退院すると “リバウンド” して、元の食事に戻ってしまうケースも多いようです。

食事療法のコツ

食物の胃での滞留時間を覚えておいてい下さい。同じカロリーでも炭水化物や動物性たんぱく質より野菜、果物の摂取の方が身体に負担が少ないです。

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そのため、私は食に関してはナチュラルハイジーンという考え方を提唱しております。野菜と果物には農薬や儒金属の問題はありますが、これらは満腹になるまで食べても血糖が上がって糖尿病になることはありません。

また、すでにご紹介したを上手く活用していただくと、血糖が上がりにくくなります。さらに桑葉も活用されると、食事制限の苦しみがかなり緩和すると考えます。 

糖尿病治療 経口血糖降下剤の盲点

経口剤を使う治療は、糖尿病治療の中でもっとも一般的な治療法です。

糖尿病治療薬の3タイプ

糖尿病治療薬は大きく分けて3タイプあります。

① 体内でのインスリンに対する抵抗性を改善することによって効果を出す

② 食後、急激に血糖値が上がらないように改善するもの

③ インスリンそのものの分泌を促進するもの

そのなかでも③のタイプは良く使用されます。多くの人が使用しているスルホニル尿素剤(SU)は、日本では治療の第一選択薬として処方されています。

米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が合同で発表した糖尿病の治療アルゴリズムでは,2型糖尿病患者への第一選択薬としてメトホルミンが推奨されており、国や地域によって第一選択薬に違いがあるようです。

2012年11月第9回国際糖尿病連合西太平洋地区会議(IDF-WPR )/第4回アジア糖尿病学会(AASD)学術集会で、高知大学医学部の藤本新平氏は,「第一選択薬はインスリン分泌促進薬に」の立場から解説し,インスリン分泌促進薬を使用することで,より効果的な治療が行えると述べた。インスリン分泌障害をきたすβ細胞の機能低下は,2型糖尿病の発症前から徐々に進展し,発症後もさらに低下するが,インスリン分泌促進薬による治療は,このような病態に対して矛盾のない治療だとした。2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬の効果を検討したメタ解析によると,BMIが低い日本人患者では,非日本人患者よりもHbA1cの低下度が大きいという結果が得られており,非肥満患者に対する高い有効性も示唆されている。また,SU薬は空腹時高血糖に,DPP-4阻害薬は食後高血糖に対して有効であり,それぞれが異なる作用をもつため,患者のインスリン分泌低下の程度に応じて,両者の用量を調節して併用することも可能であるとした。一方,インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン薬では,女性での骨折リスクの増加や,膀胱癌リスク,心不全リスクの増加などが懸念材料とされている。なお,大規模臨床研究UKPDS 80ではインスリン分泌促進薬によって心血管イベントおよび心血管死が抑制されるという結果も得られているが,藤本氏は「動脈硬化に関連するイベントの予防において,どのOADに利点があるのかについては,現在のところ明確な根拠はない」と述べたうえで,「総合的に判断するとインスリン分泌促進薬が第一選択薬として適しているのではないか」と発表されています。

SU剤は経口糖尿病薬の中でもっとも危険?

糖尿病治療薬=SU剤ともいえるほど一般的な薬で、日本で良く処方されている薬です。

この薬は膵臓に負荷をかけてインスリンを出させる作用があります。

先に述べたように、Ⅱ型糖尿病の場合、大きな原因は食事やストレスなどの生活習慣によって血糖値が高い状態が慢性的に引き起こされている点です。何とか血糖値を下げようと、膵臓は懸命にインスリンを分泌しようとして疲弊しています血糖値が高い人の膵臓は、働きすぎて疲れているのです。

疲れの原因を改善して、休めてあげる必要があります。十分休息して元気になれば、膵臓は回復して、再びインスリンを分泌できるようになります。

しかし、SU剤はこの疲労した膵臓に「ムチ打つ」ことで、無理やりインスリンを出させるのです。最初は効果的でも、原因を改善せずにムチを打たれ続けては、やがては燃え尽きてしまうでしょう。

燃え尽きてしまうと、いくら休めてあげても膵臓は機能を回復できません。橋爪勝先生は、SU剤を長く使ってきた患者さんほどダメージが大きく治りにくいと経験を述べておられます。

SU剤に限らず、多くの薬には同様の作用があり、使い続けると臓器が披露してしまい、効果が出なくなる、すなわち “臓器がくたばってしまう”、という副作用を考える必要があります。

緑内障薬は・・・

糖尿病の話から外れますが、長期投与となりやすい眼科分野の薬に緑内障薬があります。

緑内障は生涯点眼を続けなければいけない、と医療機関で説明を受けている患者さんも多いことでしょう。ここでは詳しく述べませんが、眼圧を下げるために何らかの負荷を目に与えているのです。注意が必要なことは言うまでもありません。

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糖尿病治療 経口血糖降下剤の選択

糖尿病治療の経口薬の中で良く使用されているSU剤には注意が必要ではないかとお伝えしました。

では、どの薬を選択すればよいのでしょうか。

糖尿病治療薬の3タイプの中でどれが良い?

糖尿病治療薬は先に述べたように大きく分けて3タイプあります。

① 体内でのインスリンに対する抵抗性を改善することによって効果を出す

② 食後、急激に血糖値が上がらないように改善するもの

③ インスリンそのものの分泌を促進するもの

日本で良く処方されているSU剤は③の作用でしたね。

ビグアナイド系薬剤

米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が合同で発表した糖尿病の治療アルゴリズムでは,2型糖尿病患者への第一選択薬としてメトホルミンが推奨されています。ビグアナイド系薬剤と呼ばれる薬です。

我々の身体には、必要な時のために一時的にエネルギーを保存しておく働きがあります。「グリコーゲン」として保存されます。グリコーゲンは主に筋肉や肝臓に蓄えられています。

グリコーゲンはブドウ糖が沢山つながったものです。必要な時に分解し、ブドウ糖としてエネルギー源になります。

ビグアナイド系薬剤は、肝臓からのブドウ糖(グリコーゲン)の放出と消化管からの等の吸収を抑制することによって、血糖値を上げないように働きます。

また体内でのインスリン抵抗性を改善もします。すなわちインスリンの働きを良くすることも明らかになってきています。

DPP4阻害薬

理論的に膵臓に直接影響を与えないので、疲弊した膵臓にムチ打つことはなさそうです。

我々が内から食べ物を入れると、消化管に入ります。そのときに、「インクレチン」というホルモンが消化管(小腸)から分泌されます。このホルモンは膵臓に作用し、インスリンを増やす作用があります。SU剤と同じなのでは、と思われそうですね。しかし、このホルモンは体内に長くは留まりません。およそ数分で消えてしまうのです。

これはDPP4という酵素が関係しています。DPP4はインクレチンを分解します。その結果、インスリンが出ないようになります。DPP4阻害剤で阻害することで、インクレチンの活性を保つのです。そのため膵臓に負荷が殆どかからないのです。

それでも基本は食事療法と運動療法

こうした比較的安全な薬を選択したとしても、血糖値が高くなった原因を解消しなければ治療としては片手落ちです。

食事療法、運動療法は糖尿病コントロール、糖尿病網膜症をはじめとした3大合併症の治療の基本であることに変わりはありません

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