身体にとっての異物(抗原あるいはアレルゲン)が体内に入ってきた時、これに対抗する物質(IgE抗体)を作って排除・防御するしくみが身体にはあります(抗原抗体反応)。
抗原に対して適切な防御であれば問題ないのですが、抗体が体内で増えすぎ、本来の防御から逸脱してしまった過剰反応がアレルギーです。この抗原抗体反応が、鼻の粘膜で起これば「アレルギー性鼻炎」、気管支で起これば「喘息」、腸壁で起これば「食物アレルギー」となります。もちろん眼科では花粉症をはじめとする「アレルギー性結膜炎」はよく知られています。
例えばアレルギー性鼻炎なら、くしゃみや鼻みずなどによって、アレルギー性結膜炎であれば涙で抗原を排除しようとします。花粉症で涙が止まらなくなるのはこの反応のためなのです。
アレルギー性結膜炎の治療は前回お伝えした原因となるアレルゲンの除去がもっとも効果的です。アレルゲンの確認のための血液検査の結果を見て、数値の高い物質(例えば「杉」)を遠ざけます。そうすると当然ですが不快な自覚症状が起こりにくくなります。
しかし、残念ながらアレルゲンが存在しない世界というのは考えられません。
そのため、不快症状を早急に軽くするために、目のかゆみであればまずは点眼薬を使って保険対応治療をすることが一般的です。誰でも不快な症状は早く抑えたいですから、「良く効く薬」を求めます。
一般的治療
点眼薬には色々な種類がありますがその中の一つに抗アレルギー点眼薬があります。花粉アレルギーなど季節性のものは花粉が飛散する2週間くらい前から点眼しはじめると効果的です。
当然ですが、目の症状には「点眼薬(いわゆる目薬)」、鼻の症状には「点鼻薬」、をまずは選択すると全身への副作用が少なく済みます。
こうした局所的な投薬で症状が改善しない場合は「内服薬(飲み薬)」を検討します。内服薬には西洋薬と漢方薬があります。私は症状が軽い場合はまずはその人の体質(東洋医学では「証」と呼ばれます)を診断して漢方薬をお勧めすることが多いです。子供さんが使っても眠くなるなどの副作用が出にくいため、日常生活への負担を最小限に抑えられるからです。
また、西洋薬のかゆみ止め内服薬は涙の分泌を低下させ、ドライアイが強くなることが多いです。特にコンタクトレンズを使用している方は注意が必要です。アレルギー症状が強い時はそもそもコンタクトレンズは使用するべきではありません。アレルギー症状が生じている時にコンタクトを使用すると、アレルギーだけでなくドライアイ悪化も必発です。その時だけでなく、無理してコンタクトをすることで将来の目の障害の芽を知らないうちに育ててしますのです。
症状の程度にもよりますが、コンタクトレンズを何年にも渡って使用を希望されるアレルギー体質の方は考え直して方がご自身の将来のためです。近視手術で近視を治すほうが安全です。
コンタクトレンズでアレルギー、ドライアイが確実に悪化してお悩みの患者さんは皆さんが思っているより多いのです。コンタクト中止が一番の「花粉症対策治療」なのです。
主な保険診療治療薬
以下、協和発酵キリン株式会社のサイトより転載します。
主な花粉症の治療薬
薬の名前 |
剤型 |
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経口薬(飲み薬)
点鼻薬[鼻噴霧用]
点眼薬 |
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経口薬(飲み薬)
点鼻薬[鼻噴霧用]
点眼薬 |
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経口薬(飲み薬) |
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点鼻薬[鼻噴霧用] |
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経口薬(飲み薬)
点鼻薬[鼻噴霧用]
点眼薬 |
※薬の効果には個人差があるので、医師に相談して自分に合った薬を選択してもらうことが大切です。
花粉症は目鼻コンビでの治療が有効
眼科受診される患者さんは目薬だけを希望される方が少なくないのです。実は、鼻の治療も併用する方が目のかゆみは良く収まります。
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今回ご紹介した治療薬は全て保険診療薬です。
これらは痒みなどの不快症状を抑えることは可能であっても、アレルギー体質となった原因は何も治しません。つまり、保険診療では症状軽快はあってもアレルギー体質は治さないのです。
そのため毎年、定期的に眼科や耳鼻科を受診される方が後を絶ちません。
花粉症 血液検査で何がわかる?
意外と患者さんが理解されていないアレルギーの原因とタイプについてご紹介いたします。
花粉症をはじめとするアレルギー体質を作る原因
何故アレルギー体質になったかを考えたことがない方が多いですね。
物事には何らかの原因があるはずです。アレルギー反応がどこで起こっているかを考えてみましょう。以下、日本アレルギー学会のホームページからご紹介します。
『アレルギー反応を演ずる役者は、たくさんいます。主な役者は、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなどのタンパク質や化学物質です。これらの役者たちが、連携してさまざまな種類のアレルギー反応を演じています。』
これらは何処にあるのでしょうか?
問題は血液の質の低下
もうお分かりでしょう。
これらは血液の成分です。血液の質が悪くなることで免疫力が低下して、起こさなくても良い「自分の身体を攻撃する」反応が起こっている状態! これがアレルギー反応です。
アレルギーの血液検査をお勧めしていますが、何を調べているのかを日本アレルギー学会のホームページから以下ご紹介します。保険診療で対応できる血液検査では「IgE抗体」という血液中の成分を調べているのです。
『 IgE抗体は、即時型アレルギー反応をおこす大切な役者です。アレルゲンによる感作がおこると、そのアレルゲンにだけ結合することができる特異IgE抗体が形質細胞で産生されます。アレルゲンが卵白であれば卵白特異IgE抗体、ダニであればダニ特異IgE抗体が産生されます。産生されたIgE抗体は、血液中を流れて、私たちの皮膚や粘膜のすぐ下にいるマスト細胞や、血液中を流れる白血球の一種である好塩基球の表面にくっつき、アレルゲンと出会うのを待っています。
アレルギーの血液検査で測定しているのが、このIgE抗体の量であり、現在200種類以上のアレルゲンに対する特異IgE抗体を測定することができます。測定値は、クラスという段階的に量をわかりやすく示す方法でクラス0~6まで7段階で示す方法がとられています。値が高い方がその特異IgEの量が多いことを示していますが、ここで気をつけなければいけないことは、この値が高いからと言って必ずしも臨床症状と相関しないということです。特に、食物アレルゲンでは、特異IgE抗体がある程度高くてもそのアレルゲンを摂取しても症状がでないことがしばしば経験されます。
診断の参考にしていると考え頂くのがよいようです。
マスト細胞や好塩基球の表面にくっついている二つのIgE抗体にアレルゲンが結合し、2つのIgE抗体につながりができるとそのシグナルが細胞内にはいりマスト細胞や好塩基球が活性化してヒスタミンやロイコトリエンを放出する仕組みがあります。この物質によって即時型アレルギー反応による症状がおこります。』
IgE がアレルギーの全てを反映しているわけではなく、自覚症状と必ずしも相関しない場合があることも知っておいてください。しかし、IgE が上昇していれば血液中に「正常ではない状態」、血液の質の低下が生じていることは間違いないと言えるでしょう。
こうした血液の質の問題を起こさないためには、血液を作る「水と食」が重要なのです。ここで腸の状態が血液造血にとって重要となります。
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覆面型アレルギー これが多いからややこしい!?
血液検査(IgE検査)でアレルギー原因物質が証明されれば判断は容易です。しかし、IgE の値が低いと多くの方は医療関係者を含め「アレルギーが無い」と間違った判断がされる場合があります。
例えば青白い顔や目の下の隈がアレルギーによって起こっているかもしれないと考える人は、ほとんどないでしょう。また、疲れやすかったり、あるいは気分が良くない時にアレルギーを頭に浮かべたり、頭が痛いとか足が痛いとか胃が痛いとかいう場合にアレルギーを考えたりしないでしょうね。
このような症状が続けば、専門医を受診して詳しい検査を受ける必要があります。貧血や、感染症、甲状腺機能低下があるかもしれません。しかし、検査で何も異常がなければ、症状はアレルギーによって起こっている可能性があります。
アレルギーは氷山にたとえられます(下図)。喘息や花粉症やアトピー性皮膚炎は、氷山の海面から突き出た部分に相当します。これらの疾患はアレルギーが原因だと容易にわかります。しかし、水面下に没して見えない、あまり目立たない身体的症状も実はアレルギーによって起こります。本人(あるいは親)もアレルギーの原因を見逃し、対症療法に終始している場合が多いのです。このようなアレルギーは、覆面型といわれIgE も低く、血液検査では診断できないことが多いのです。
(ふくずみアレルギー科ホームページより)
次回は、ではどうすればアレルギー体質を改善できるのかについてお伝えしたいと思います。
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