専門医コラム
2019/04/12
他の細胞内小器官と異なるミトコンドリアの特徴
細胞内小器官と言われるミトコンドリアですが、他の細胞内小器官とは異なり、ミトコンドリア独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を有しているという特徴があります。
「DNA」とは、生物の細胞内で遺伝情報となるデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の略称です。
デオキシリボ核酸とは、特定のウイルスを除く生物の遺伝子の本体です。
真核生物では大部分が細胞の核に存在しています。
デオキシアデニル酸,デオキシシチジル酸,デオキシグアニル酸,デオキシチミジル酸の4種類のヌクレオチドで構成されます。
ヌクレオチド(nucleotide)とは、塩基+糖+リン酸の構造をもつ化合物です。核酸を構成する構造単位です。また遊離した形で細胞質にあるヌクレオチドは,エネルギー代謝や物質の中間代謝において役割を果たしています。
尚、核酸は、このヌクレオチドが長い鎖状に結合した高分子物質です。
ごく一部の例外を除いて,このうちの3種類の組合せでアミノ酸がコードされ,遺伝コードとなります。
ヌクレオチドがホスホジエステル結合によって長く直線状につながった構造をしており(バクテリアなどでは環状のものもあります)、有名なワトソンとクリックによって提示された二重らせんの立体構造となっています。
各染色体に1本のDNA(2nで2本)が対応し、ヒトでは全体が約30億ヌクレオチドでできていると言われています。
2001年にヒトの全ヌクレオチドの配列順序が発表されました。
現在ではDNAのわずかな配列の違いから、作物の品種や個人の識別にも利用されています。ヒトの場合は、約30億個のDNA配列のうち、個人差が現れやすい数百個分の配列を複数部分組み合わせて調べるDNA型鑑定が主に使われています。
国内の犯罪捜査で使われているDNA型鑑定では、別人で型が一致する確率は最大でも4兆7千億人に1人とされているほど誤差が少ないのです。
話を戻します。ミトコンドリアが独自のDNAを持っていることは、太古の昔、ミトコンドリアが自立していたことの証拠とも言われています。
とは言え、ミトコンドリアDNAはヒトの核に存在するDNAと比べると
はるかに規模が小さいのです。 約20万分の1程度であり、エネルギー産生に関わる電子伝達系やATP合成酵素などのミトコンドリア独自の機能に関わるごく少数のタンパク質の鋳型となる限られた遺伝子を持っているだけなのです。
核のDNAが23000種類ほどのタンパク質を作るのに対し、ミトコンドリアDNAはわずか13種類のタンパク質を作るだけです。
それでも 核のDNAとは異なる 独自のDNAを有しているのはとても特徴的なことと言えるでしょう。
人類の祖先がアフリカから発生してきたことなどが解明されたのは、このミトコンドリアDNAの解析のおかげです。
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