専門医コラム
2020/06/30
眼と”肝”、”腎” それぞれの東洋医学的働き
眼科疾患が眼だけ独立して生じているものではない、
この点について東洋医学的な捉え方をお伝えしたいと思います。
生きていくための基本的な生命エネルギーの源となる "肝" 、"腎” が、
眼科とどのように関連するのかをお話しさせていただきます。
眼は肝に蓄えられた血の栄養で働く
東洋医学には、「肝は眼に穴を開く」「肝は血を受けて能く視る」
経験則があります。
これらは肝に蓄えられている血の栄養によって眼が働くと解釈され
全身に栄養を与え潤すと同時に精神活動を支える物質を、”血” と呼んでいます。
西洋医学で言う、我々に馴染みの深い「血液」
”血” は体内に吸収された飲食物を材料にして作られます。
当然ですが、水と食の大切さがここでも確認されます。
「我々は食べたもので出来ている」のです!
その後、”血” は肝にストックされます。
そして肝は必要に応じて、全身の血流量をコントロールします。
眼も肝の作用により、必要な血が供給されていると考えます。
血量のコントロールの乱れや血の使い過ぎで眼科症状に
肝にトラブルが起こると、眼にも症状が現れるのは、
疲れ目の背景となる肝のトラブルとして、
まずあげられるのが肝気鬱結(肝気鬱滞)。
いわゆる更年期障害・自律神経失調症にストレス、イライラ、
怒りっぽい状態と捉えてもらえれば良いかと思います。
そのために、血量のコントロール機能が乱れ、
眼に十分な栄養が行き渡らない状態です。
眼科的捉えると、この場合、眼の症状にプラスして、
胸脇部がはって痛む、イライラする、ため息が多い、
憂鬱(ゆううつ)感などの症状も出現します。
また、
造血や血の貯留に関わる”腎” 目の症状との関連
さて、”血” は骨髄でも作られます。
血液は腸で作られるという「腸造血説」が有力となっていますが、
「骨髄造血説」もまだまだ支持されています。
中国医学において、その骨髄をつかさどっているのは、”腎” という臓器。
"腎" は "精" という、身体の基本物質を、"血" から転化し蓄えるという働きもします。
"肝" に蓄えられた "血" が余ると "精" になり、"血" が不足すると "精" が "血" に変わります。
この考えは西洋医学は持ち合わせていません。
また、"腎" は生長、発育、老化にも大きく関与します。
加齢にともなって "腎" が衰えても、眼科の症状となって現れます。
「白内障」が代表例ですが、"腎” の衰えに伴って生じる疾患です。
そのため "腎” のエネルギー不足を補う牛車腎気丸を処方する場合がありますが、
この漢方薬は白内障の治療薬として保険診療での対応が認められて
疲れ目などの眼の症状と関係する "腎" の状態として、”腎虚" が挙げられます。
老化により骨髄における "血" の製造力が不足し、
さらにそれを補う "精" も不足している状態で、結果的に "血" が行き渡りません。
この場合、眼の症状にともなって、腎虚のために足腰のだるさや、
いかがでしたでしょうか? 難しい、と思われましたか?
深く考えずに眼科の病気を ”治す” ためには、
肝、腎、脾 を全身的に改善する必要があることを多くの方にご理解いただけれ
⇒ 眼と”肝”、”腎” 対策篇