専門医コラム
2015/05/26
禁煙するとむしろ血糖値が上がる可能性、糖尿病の人では要注意
糖尿病の人が禁煙すると、禁煙後3年間は体重とは無関係に血糖値が高くなる可能性があるとの医学報告です ⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25935880
リスク減には10~12年?
英国コベントリー大学を含む研究グループが、有力医学誌の糖尿病/内分泌分野版であるランセット・ダイアベーツ&エンドクリノロジー誌オンライン版で2015年4月29日に報告しました。
喫煙は糖尿病の危険因子と分かっています。もちろん様々な目の病気の危険因子でもあることは知られており、日本の失明一位、緑内障との関連も高いのです。
そうした喫煙の影響とは裏腹に、禁煙後3~5年の人は喫煙を続けている人より糖尿病のリスクが高くなるというデータもあります。10~12年が経ってようやく一度も喫煙したことのない人とリスクが同等になるというものです。
研究グループは、英国の一般医から情報を集めた多人数を対象としたデータベースから、糖尿病の成人喫煙者1万人以上について、禁煙が糖尿病の管理に影響を及ぼすかを検証しました。体重の変化との関係も調べました。
三大合併症にもつながる
その結果、3000人以上が1年以上禁煙。禁煙後1年以内に血糖値の指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は下がるどころかむしろ0.2%増加!
その後、HbA1cは減少し、禁煙3年後に以前と同じになりましたが、HbA1cの変化は体重変化と関連しませんでした。
糖尿病では、禁煙後3年間は体重とは関係なく血糖コントロールが一時的に不良となるようです。これは良くなる前に、一時的に症状が悪化する "好転反応" という現象かと推測します。タバコによって体内に蓄積した "毒" が、体外に排出されるのに時間がかかる可能性を示唆していると考えます。
全体的に考えると、糖尿病の三大合併症である網膜症、腎症、神経症につながる可能性があるので、禁煙後はより全身管理が重要と考えられます。