専門医コラム
2015/06/09
風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やす、飲むほど影響、米国グループ報告
花粉症や通年性アレルギーをお持ちの方で、年中抗アレルギー薬を服用している方が少なくないようです。『クスリを飲むのを止めると症状が出てくるから』といった理由で、対症療法と知りつつも、”止められない、止まらない” !
私は全身的に効果を及ぼす内服薬は極力少なくするように処方を心がけています。多くの西洋薬では、長期投与は効果のある薬程副作用を起こしやすいからです。
ごく身近にドラッグストアーで手に取れるような風邪薬や鼻炎や胃腸の薬に、アルツハイマー病のはじめとした認知症のリスクを高める可能性があるという研究報告が発表されています。
Gray SL et al.Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study.JAMA Intern Med. 2015 Jan 26 [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25621434
医療機関でもらう薬も当てはまるものがあります。全身に効果を及ぼす内服薬では、飲むほどにリスクが高まる点に注意した方が良いでしょう。
胃腸薬やうつの薬も
米国シアトルのワシントン大学を中心とする研究グループが、内科分野の国際誌であるジャマ(JAMA)インターナル・メディシン誌オンライン版で、2015年1月26日に報告しています。
問題になるのは、抗コリン作用を持つ薬です。抗コリン作用を持つ薬剤が多く、総合感冒薬や鼻炎薬、胃腸薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬などが知られています。
神経伝達物質の一種である「アセチルコリン」による神経伝達を抑える効果を持った薬です。
これまで抗コリン作用薬を使うと、一時的に記憶力が落ちたり、課題処理能力が落ちたりする認知障害が生じると知られていますが、薬の使用を中止すれば元に戻ります。
しかし、もしかしたら認知症との関連もあると見る研究も少ないながら存在していました。
研究グループは、抗コリン作用薬を使った蓄積と認知症リスクの関連を明らかにする研究をより大規模に行いました。
研究開始時に認知症がなかった65歳以上の参加者3434人を対象に、2年ごとに状況を調査、平均7.3年間の追跡を行ったのです。
使用を長期間、最小限にする努力が必要
参加者のうち2割強が認知症を発症。認知症の8割はアルツハイマー病でした。
認知症およびアルツハイマー病の発症と、抗コリン作用薬の使用状況の関係を調べたところ、抗コリン作用薬を長期間にわたって多く使用するほど認知症のリスクが増していました。
10年間の期間で、標準的な1日の用量を91日分から365日分使っていると危険度は1.19倍になり、さらに366日から1095日使った場合1.23倍、1096日を超えると1.54倍となっていました。
1年間当たり9日くらい関係した薬を飲むとしたら注意した方が良さそうです。風邪薬のほか、アレルギーで鼻炎の薬を使ったりすると長期に及ぶこともありそうで一般の人でも注意が必要です。胃腸の薬も同様で、長期にわたることの多い、精神関係の病気ではより注意が必要と考えます。
医療従事者や高齢者はこのリスクを認識しておく必要がありますね。また抗コリン作用薬の使用を長期間にわたって最小限にする努力も大切で、局所的な治療で症状が治まるのであれば、なるべく全身投与は割けた方が良いと思います。
大事な事は、薬が不要になるくらいにご自身の免疫力を高めておく事です! 『備えあれば憂い無し』なのです!