専門医コラム

2015/06/16

殺虫剤とADHDが関連、リスクが3倍に

8bfc98bdeb41a6fc675417296aef5d05_s

当院のアレルギー科では以前より殺虫剤や虫除け薬の問題を指摘してきました。今回、一般的に家庭内で使われている殺虫剤が子どもたちの注意欠如・多動症(ADHD)と関連しているという医学報告をご紹介します。

米国シンシナティ小児病院医療センターを中心とした研究グループが、2015年6月1日付エンバイロメンタル・ヘルス誌で報告しました。

Study Links Exposure to Common Pesticide With ADHD in Boys.

http://www.cincinnatichildrens.org/news/release/2015/study-links-pesticide-ADHD-in-boys-06-01-2015/

ネズミに悪影響

健康への有害な影響への懸念から、米環境保護局は有機リン酸殺虫剤(リン酸を含む有機化合物)の住居での使用を2000年から2001年にかけて禁止としました。この禁止によってピレスロイド系殺虫剤の使用が増加し、これらの殺虫剤が今では住居の害虫防除や公衆衛生の目的で多用されるようになっています。

ピレスロイド系殺虫剤は、禁止された有機リン系殺虫剤のような急性毒性はなく、安全な選択肢であると考えられることが多いのですが、動物実験では、メスのネズミの快感とのつながりを持つ「ドーパミン系」と呼ばれる神経回路で、多動や衝動性を引き起こす悪影響が及ぶと考えられているのです。ドーパミンは脳内の神経化学物質で、ADHDを含む多くの病気に関与していると推測されています。

今回の研究報告では8歳から15歳の年齢の子ども687人についてのデータを検討し、子どものADHD症状とピレスロイド系殺虫剤の血液での検査への影響の情報が検討されました。

多動性と衝動性が増大

その結果、ピレスロイド系殺虫剤のバイオマーカーである尿中の「3-PBA」と呼ばれる物質が検出された男子では、検出されなかった男子と比較してADHDとなるリスクが3倍となるという結果が出ました。。

多動性や衝動性は3-PBA濃度が10倍になるごとに50%増えていました。

女子ではこの化学物質とADHDの諸症状との関連性は確認されませんでしたが、もちろん無関係とは言えません。

有機リン酸殺虫剤の代わりに、『安全性』をうたってピレスロイド系殺虫剤が増えたのですが、『殺虫』剤は当然人体にも『殺虫』効果が及ぶと考えるべきでしょう。今回の医学報告は、当然とも言える結果と思われます。

もちろん、近視をはじめとした眼の病気との関連も考慮に入れるべきと考えます!

ページのトップへ