専門医コラム

2015/07/26

食事の変更でまたたく間に腸内フローラなどが一変、2週間で大腸がんになりやすい体に!

 

食事の影響は怖い!

外来で患者さんに、『病気の治療には目であれ身体であれ、食を変える事が必要です』とお伝えすると、『???』という反応をされる方が少なくありません。近視をはじめとした目の病気を治すためには、その疾患の原因に繋がった食生活を変える事が近道なのですが、”食” と ”病” は無関係と思われている方が多いようです。中には、好き嫌い無く何でも食べると病気が治る、と誤解されている方も!?

 

今回の医学研究報告は、このような誤解に気付いてもらう参考になる事と思います。

 

大腸がんの少ないアフリカの人に、2週間だけ食べものを変えてもらったところ、またたく間に大腸がんになりやすい腸の状態に変わってしまった、という報告です。

 

米国ピッツバーグ大学医学部を含む、英国、フィンランド、南アフリカ、オランダの国際共同研究グループが、オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ2015年4月28日に報告しました。

 

O’Keefe SJ et al.Fat, fibre and cancer risk in African Americans and rural Africans.Nat Commun. 2015;6:6342.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25919227

 

Two-Week International Diet Swap Shows Potential Effects of Diet on Colon Cancer Risk. University of Pittsburgh Medical Center News Releases. 2015 Apr 28.

 

http://www.upmc.com/media/NewsReleases/2015/Pages/diet-swap.aspx

大腸がんに国による差

南アフリカの農村地域では1万人当たり5人未満で、がん化する場合もある大腸ポリープすらめったにありません。一方で、アフリカ系米国人では、大腸がんの発生率は1万人当たり65人と10倍以上もの開きがあります。同じアフリカを起源とするにもかかわらず大幅に異なるのです。西洋ではがんによる死亡で2番目に多いのが大腸がんです。

 

この差の理由は、食事の違いではないかと推測されました。

 

アフリカ系米国人の食事はアフリカの食事より動物性のタンパク質と脂質が多く、水溶性の食物繊維が少ないことが、がんリスク増加の原因と考えられます。

 

米国系では、大腸にある胆汁酸の水準が高まっているほか、大腸の短鎖脂肪酸量が低く、粘膜の増殖性のがんリスクにつながるような検査値が高まっていると分かっています。

 

似たような話としては、大腸がんの少ない日本人がハワイに移住すると、地元民のように大腸がんが多くなるまでに1世代しかかからないと示す研究もあるのです。

食事を変えるとどんな影響?

今回の研究は、50~65歳のアフリカ系米国人と南アフリカの農村地域の住民20人ずつに、ピッツバーグ大学とアフリカの施設に宿泊してもらい、食事のパターンを取り替えを行いました。

 

がんリスクに影響を及ぼす喫煙などの要素がない環境で、それぞれの食材と調理法を使って準備した食事を交換して2週間食べてもらいました。 南アフリカの田舎の人については、高線維で低タンパク質の食事から、「西洋風」の食事に、つまり低繊維で高タンパク質、高動物性脂肪の食事に変更し、アフリカ系アメリカ人にはその反対を行いました。

 

前後に便と腸の中を大腸内視鏡検査で調べ、2週間続けて、腸内の化学的な変化、生物学的性質の変化を測定したのです。

食事により腸内細菌も変わる

その結果、劇的な変化が!

 

米国人の方は腸内の炎症レベルが下がり、がんのリスクと関係する化学物質が低下。アフリカの人は、がんに関係する計測値が劇的に増加しました。

 

変化した要素を具体的に見ていくと、腸内壁の細胞交替の速度、食物線維の発酵の程度、がんリスクに関連する細菌の代謝活動、炎症に関係する検査値などです。それぞれお互いのものに入れ替わるかのように変わってしまいました。

 

特に、アフリカ系米国人では、腸内細菌の種類が変化。がんに対抗する仕組みで重要な役割を果たすと考えられている短鎖脂肪酸の一つ、「酪酸エステル」の生産が増加したところが注目されると研究グループは説明する。酪酸エステルは、免疫の調整役である制御性T細胞(Tレグ、Treg)を増やすとして関心を集めています。

 

アフリカ系米国人では、食物繊維がおよそ10gから50g以上に増えたことが、がんリスクの低下を反映した検査値の変化につながっていると見られている。

 

動物性の脂肪とタンパク質の減少も役立った可能性がある。

逆に食事の改善を

西洋型の食事から高食物繊維、低脂肪の伝統的なアフリカの食事にわずか2週間変えただけで、がんリスクにつながる検査値に減少が見られました。逆に言えば、大腸がんのリスクを減らそうと思えば、食事については内容を変えると思いのほか早期に成果は出てくるのです。2週間と言う短期間でもこれほどの変化が生じる事は特記すべき事です。

 

いつでも身体は食で変えられる!!

 

食で目の病気も改善出来ることを理解頂ければ幸いです。

 

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