専門医コラム

2015/08/23

こどもさんの遠視、目の成長不足②

視力表

視機能の発育時期、異常の発見

視力の発達をはじめ、両眼視機能など基本的な眼の能力は6歳ごろで完成します(これ以降は成長が見込めないというわけではありませんが、速度は落ちます)。

ですから、なるべく早い段階で診断を受け適切な対応が必要です。しかし、子供さんにとっては、それが「当たり前」の状態なわけですから、本人が異常を訴えることは少ないのです。

テレビを見る目付きが不自然」だとか、「にらめっこした時に目の位置が内に寄っている」など、親御さんの判断が必要です。

また、遠視のある子供さんでは、「落ち着きがない」「集中力がない」「偏頭痛持ちである」といった点も挙げられます。「調節」するために眼の中の毛様体筋が絶えず緊張を強いられているために、そのストレスが脳に伝わり(われわれは脳で物を見ている)、集中できなかったり頭痛に繋がるようです。

弱い遠視の場合は視力が良好な場合が多く、なかなか気付きませんが、眼の疲れや偏頭痛を訴えるようなら一度眼科専門医に相談することをお勧めします。

遠視への眼科的対応

さて、子供さんに遠視が見つかった場合、医師はまずメガネの処方をします。

「小さな子供にメガネを掛けさせるのはかわいそう」という気持ちはわかりますが、小児の遠視にはメガネによる矯正は不可欠です。まず、メガネで網膜ピントが合うように光刺激を正しく調節します。その上で斜視や両眼視機能の検査をし、必要ならば、斜視の外科的手術や視能訓練(しのうくんれん)を行うことなります。

視能訓練とは、弱視の矯正や、立体視や融像といった両眼視機能を訓練するもので、専門の視能訓練士という資格を持った方が医師の指示で行います。民間の視力トレーニングを標榜する施設とは全く異なりますのでご注意ください。

子供の遠視は、成長と共に眼球が大きくなり、自然と弱くなっていくのが普通です。成長を妨げている問題を見つけて解決出来る事が理想です。

そのために当院ではアレルギー科を併設して、眼球発育に問題を起こしている原因を探して解決方法を提案しています。目はカラダの一部ですから、カラダの対応が必須です。

眼球が正常な発育を取り戻せば、将来的にはメガネを外せることも多いのです。

小さな子供にメガネを掛けさせるのは不憫だと思う気持ちもわかりますが、子供さんの将来の健全な視力のためには必要なことです。

また、ゲームをするな、漫画を読んじゃダメ、等、近視予防のための諸注意がありますが、遠視の場合はさほど気にすることはありません。メガネで矯正した上でなら、どんどん眼を使い、網膜にピントの合った正しい光を送り込むことは、より治療効果を高めることになります。

但し、眼球運動が抑制されるような一点集中作業より、目をキョロキョロさせて物を探すような眼の使い方をお勧めするのは近視の場合と同様です。

視能訓練の中にはペナリゼーション(良好な方の眼を遮蔽し、弱視眼だけでモノを見る訓練)等の、子供が嫌がる訓練がありますが、テレビゲームや漫画、絵本など、子供が興味を示す方法を使って行えば嫌がらずに続けていくことも出来ます

焦らず、長い眼で矯正・治療を見守ってあげてください。

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