専門医コラム
2015/09/17
具合悪い…病院行った方がいい? 「症状チェッカー」で調べよう!
現在普及の症状チェッカーの信頼度とは
パソコンやスマホで、自分の病気の症状を入力し、受診が必要か確認できるソフトウェア「オンライン症状チェッカー」が普及していきています。米国では大学や病院なども提供しています。
その信頼性について検証結果が、「今のところ過信しない方が良さそうだ」と報告されました。
医療分野でどうネットを使うか、改善の余地も大きいと思われます。
自己診断ツール「症状チェッカー」
米国ハーバード大学医学大学院の研究グループが、有力医学誌BMJ誌で2015年7月8日に報告しました。
Checking Up on Symptom Checkers.
事故や災害で一時に大勢の負傷者が発生した場合に、緊急性や重症度に応じて治療の優先順位を決めることを「トリアージ」と言います。
最近、「オンライン症状チェッカー」と呼ばれるソフトウェアが普及してきています。これは、コンピュータを使ったオンラインの自己診断ツールで、治療を今すぐ受けるべきか、または良くなるまで家で休んでいるべきかなどについて、判断のアドバイスを得るためのツールです。
信頼性やいかに?
症状チェッカーは、大学医学部(ハーバード大学を含む)、病院、保険会社のほか、公的な国民保健サービス(英国NHS)などによって提供されています。
症状チェッカーは、多項目の症状選択チェックリスト、自由記入欄から成り立っています。ソフトウェアプログラムは、選択および入力された症状から、可能性がある病気の一覧を表示します。同時にすぐに病院へ行くべきか、家で休んでいるべきかを決定、指示もします。
果たして、症状チェッカーの情報はどれくらい信用できるか。ハーバード大学の研究グループは、現在普及している症状チェッカーの信頼性について検証しました。
23の症状チェッカーを検証
検証に用いたのは、現在普及している23の症状チェッカー。全て英語版の無料ソフトで、幅広い症状に対してアドバイスを提供しているものです。
検証のために45の標準的な病気について症状一覧を挙げました。45の病気はトリアージの優先度別に「要救急治療」「要治療」「自己管理」という3つのグループのいずれかに分類できるようになっています。それぞれのグループに15ずつの病気が当てはまるようになっています。例えば、「要救急治療」には肺塞栓症、「要治療」には中耳炎、「自己管理」にはかぜなどが該当します。
用意した症状一覧を23の症状チェッカーに入力し、どれくらい正しく病気の診断やトリアージのアドバイスができているかを検証しました。
診断3割、トリアージ5割
症状に基づいて「最も可能性が高い」と判定された病気のうち、正解となったのはわずか34%にとどまりました。
さらに、「可能性が高い病気トップ3」に正解の病気が含まれている割合は51%、同じく「トップ20」までにすると58%に正解が含まれていました。
適切なトリアージのアドバイスができたのは57%でした。
この数字をどのように評価するか!
救いと言えるかもしれないのは、緊急度が高い症状ほど適切にトリアージのアドバイスができていたところです。「要救急治療」に当たる病気の80%は、症状チェッカーで正しく「要救急治療」とアドバイスされたのです。
「要治療」は55%、「自己管理」は33%と、緊急度が下がるにつれて、正しいアドバイスができている割合が減っていきました。
判断が慎重すぎる傾向
今回検証した症状チェッカーによる判断は、全体に慎重すぎる傾向が確認されました。家で休んでいれば良いのに、受診を勧める場合もありました。
今回の検証結果から、「症状チェッカーは、病気の診断もトリアージのアドバイスも、今のところあまり信頼できるものではない」と研究グループは結論付けたのです。
日本でもオンライン症状チェッカーはネット検索に引っかかる程度に存在します。今のところ、過信せずに「参考にする」程度が無難なのかもしれませんね。