専門医コラム

2015/09/26

マスコミの報道問題(加齢黄斑変性のテレビ報道)

テレビ取材器材

医療に関してのマスコミの "宣伝的” 報道に対して、時々医学会で問題視される事が増えてきています。視聴率を重視するため、どうしても "フライイング” 的な報道で興味を引こうというケースが多いのではと推測されます。

「ためしてガッテン」点眼宣伝問題

以前にもNHKの人気番組「ためしてガッテン」で、 ”視力が向上する魔法の目薬”というニュアンスで伝えられた ジクアス点眼とムコスタ点眼について、眼科専門医が一斉に『???』となったことも記憶に新しいです。

製薬会社の販売促進にNHKが加担した(製薬会社からNHKが広告費をもらった!?)とまで、眼科専門医の間では話題になったのです。

もちろん、本当に医学的に視力が良くなるような魔法の目薬は存在しません。全ての目薬は所詮は『対症療法』目的で、症状緩和剤に過ぎないからです。

しかしながら、テレビの報道効果は絶大で、全国の眼科に『テレビで放送していた魔法の目薬を下さい』と大勢の方が押し掛けると言う騒ぎになりました。点眼の結果、多くの患者さんの視力が良くなったのか•••!?  点眼薬の販売数を見れば、結果は言うまでもないのですが。

爆発的にこれらの点眼薬販売が増加の一途たどっていると言う報告は聞いた事がありません。

 『主治医が見つかる診療所」で「映像などの情報が不足」??

さて日本眼科学会と日本眼科医会は7月7日、民放テレビ局で2015年3月に放送された医療番組で加齢黄斑変性(AMD)の解説と治療について「見過ごせない内容が放送された」としてテレビ局などに改善を要望したと発表しました。テレビ局側は、視聴者向けに「噛み砕いた表現で手術VTRを構成、編集したため伝える情報が足りないものとなってしまった」と釈明しました。両会はガイドラインに記載のない治療法などが紹介されたと指摘しており、国民に誤解を与えないよう配慮を求めました。公共放送ですので、それなりの視聴者に対する責任がある筈なのですが、前述のNHKでさえ番組のプロデューサーが視聴率に言及していたとの事、民放となると尚更視聴率優先なのでしょう。

AMDは日本で増加の一途をたどっている疾患で、お悩みの方が多く、希望を持たせる報道に胸を躍らせた患者さんも多いのではないでしょうか? 過去のコラムでもAMDの新しい治療可能性についてお伝えしています。

この報道の問題に関して、日本眼科学会がホームページに示した見解を以下にまとめます。

” 2015年3月9日にテレビ東京で放映された『主治医が見つかる診療所」でAMDが取り上げられた。この際、AMDに対する硝子体手術として黄斑上膜の除去と内境界膜剥離術が紹介されていたが、「加齢黄斑変性の治療指針」にはそうした記載がなく、現時点ではAMDに対する科学的根拠はない。”

"科学的” とはどのような事か、これにも問題点はあると私は考えていますが、日本眼科学会と日本眼科医会はこのように指摘し、「必要のない手術が行われるなど、患者に直接被害が及ぶ可能性がある」と懸念を表明、テレビ東京と放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し改善を要望しました。宣伝優先の行為だったとすると、特に手術は直接患者さんの身体に侵襲が及ぶ行為ですから放送に慎重な配慮が必要である点は全く同意します。

これに対し、テレビ東京側は番組ホームページ上で治療を受けた患者はAMDと黄斑上膜を合併し、黄斑部網膜下に血漿成分がたまっていたことから、黄斑上膜除去と内境界膜剥離によって網膜のゆがみ改善と視力向上を目的とした手術を受けたと説明。番組内では視聴者に分かりやすく伝えるため、極力専門用語を使わず噛み砕いたシンプルな表現で手術VTRを編集したため、「映像やナレーションなどの情報が足りないものとなった」と説明したとのことです。

マスコミ報道に偏重があることとは良く知られています。その一つが、『病気になったら薬を飲む』ことがさも当然であるかのように様々なコマーシャルが流れて、また医療報道もされている現実でしょう。

多くの病気は薬では治りません。症状を一時抑える "対症療法” だからです。

自分の健康を損なう原因が何か、その原因が薬で治るのかよく考えてご自身の治療を選択頂く事をお勧めします

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