専門医コラム

2015/11/23

メタボがむしばむ目 目はカラダの先行指標!! ①

メタボリックシンドロームは全身病で、肝臓、腎臓、歯や皮膚にまで悪影響を与えます。そして、目はとりわけ重要です。いわゆるメタボ健診には、眼科検診が含まれていることが多いのは、深い意味があるのです。

失明原因の上位 糖尿病網膜症

最大の問題が糖尿病網膜症で、糖尿病の合併症としては、堂々の第1位です。日本人の失明原因では、緑内障に続いて多く、患ってしまえば失明しかねない一大事となります。

高血圧、高血糖、脂質異常、どれもこれも、全身の血管の機能を低下させます。血管は、末梢に行けば行くほどどんどん細くなりますが、高血糖が続くと血液がドロドロの状況になるため、目詰まりを起こした微細血管が破壊され、それより先に血液が行かなくなります。高血圧は血管壁に負担をかけることでこれを加速し、血中の脂質異常も高血糖と同様に血流を阻害するのです。

網膜剥離や緑内障を引き起こす恐れ

糖尿病による微細血管の破壊が目で起きると、視細胞は虚血(血流の減少)に陥ってしまうのを防ごうと、何とか新しい血管を新生して対応しようとします。だが、そこでできた血管はもろく、異常な血管であるため、血液が漏れ出てしまいます。視力障害に陥るのは、異常血管からの出血や、漏れ出た細胞外液で網膜中心の黄斑部に浮腫(水膨れ)が生じるためです。こうしたメカニズムで視力障害を引き起こすのが、糖尿病性網膜症なのです。

これは目だけに起るのではありません。当然、全身全ての血管を障害します。糖尿病は、”全身を腐らせる病気” と言っても過言ではありません。目の中に出血が始まっても、最初は視力に影響しない為、『目が腐って行く』自覚がありません。視力低下の自覚が出る頃には、既に手遅れとなっている場合も多いのです。

また、眼内での出血後の網膜がかさぶた状になって縮んでしまうと、内側から網膜をはがしてしまう「網膜剥離」になることもあります。糖尿病網膜症があると、異常な新生血管が、目の中を循環する水の出口をも塞いでしまい、「血管新生緑内障」になる恐れも高まります。糖尿病網膜症が進行すると、新生血管が網膜や硝子体に向かって伸び、新生血管の壁が破れると、硝子体に出血が起き(上図左)、視力低下などをもたらします。また、網膜と硝子体の間に増殖膜という膜ができて癒着し、網膜を引っ張って網膜剥離が起こることもあります(けん引性網膜剥離、上図右)。

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