専門医コラム
2015/11/24
メタボがむしばむ目 目はカラダの先行指標!! ②
糖尿病網膜症、「見えにくい」と感じてからでは遅い
“見えにくい”と感じた時には、糖尿病網膜症は既にかなり重症となっていることが多いです。そのため、血糖コントロールが良好と内科で言われていても、年1回はしっかり眼科健診を受けて、早期発見・早期の手当てに努めて頂きたいと考えます。
つい数ヶ月前まで、視力が良好だった方が、みるみる視力を失う患者さんを残念ながら私の経験からも何人もおられます。多くは、糖尿病網膜症の恐ろしさを知らずに、軽く考えていたことで起ることです。
こうした患者さんの多くが口にするのが、「よく見えているのに、何故治療が必要なのですか?」という言葉です。糖尿病網膜症は一度、視機能を落とすと殆ど回復は困難であり、視力が出ているうちに必要な治療•管理が必要である点をなかなか理解して頂けません。
初期であれば、血糖値や血圧などをきちんと管理していれば、進行が抑えられます。しかし進行してくると、網膜にレーザーを当てて血管の新生や増殖を抑える(凝固させる)手術が必要となります。網膜剥離などで、レーザー治療が難しい場合や、浮腫が起こってしまった場合は、入院手術前提で硝子体を切開してやはりレーザーで凝固させることもあるのです。
ただし、レーザー治療は視細胞を“間引き”しているだけです。糖尿病網膜症の増悪、血管新生の進行に歯止めをかけることはできても、視力回復は期待できないのです。レーザー治療によって病変部に炎症が起きれば、逆に視力が低下する恐れもあります。しかし、将来の失明に繋がる弊害を最小限にするために、機を逸せずレーザー治療を行う必要があります。
近年は、血管の新生にかかわる血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)を抑える薬(アフリベルセプトやラニビズマブ)が登場し、定期的に硝子体内に注射することによって治療の効果が高まっています。 メタボ治療で血糖やHb(ヘモグロビン)A1c、血圧が安定していると、目は大丈夫と楽観しがちですが、治療開始前から長く続いていたメタボ状態のツケによって、すでに網膜が障害されていることも多いのです。血糖コントロールが良いからと安心出来ないのが、糖尿病網膜症の恐ろしい点なのです。