専門医コラム
2015/12/30
睡眠不足は万病のもと その①
忙しい日本人、睡眠不足気味の方が大勢いることでしょう。
果たして人間はどのくらい寝ないでいられるのでしょうか?
1965年、米国カリフォルニア州・サンディエゴの高校生が、ギネスブックの不眠記録260時間に挑戦することを思い立ち、デメンツという睡眠学者が立ち会って不眠記録へ挑戦しました。その結果、264時間12分、つまり11日間の不眠記録を打ち立てました。
が、余り嬉しくない記録、というか誰もこの記録に挑戦しようとは思わないでしょうね。
ヨガの高僧の中には、食はもちろん、睡眠も殆ど無くても元気に生きていける方もいるようです。
しかし、特別な修行をしていない一般人では、睡眠不足は、交感神経を緊張させて高血圧になりやすくなり、またインスリンの分泌が減少し血糖値が高くなり糖尿病発症のリスクが高まるとも言われています。
睡眠不足時は、マイクロスリープを取る
ここで重要なことは、完璧に寝なかったということではなく、マイクロスリープという短い睡眠があったという点です。
この高校生は眠気が限界を超えると、「目を休ませたい」と言ってほんの少し目をつぶり、その後は頭が少しクリアになったとのこと。これが、数秒から10秒ほどのマイクロスリープと呼ばれるもので、短時間にもかかわらず、脳を休ませ、回復させる力があります。
この実験でもう1つ重要なことがあります。それは、11日間起きていて、その後何時間の睡眠で睡眠不足が回復したかということです。
何と、たったの14時間でした。
一日6時間が通常の睡眠としても、11日間でしたら 6時間 x 11日 = 66時間 寝ないと不足睡眠分をカバーできない計算になります。体調回復に、その 1/5 程度の睡眠時間で十分だったというのです。
つまり、睡眠というのは非常に効率が良いシステムで、睡眠不足は短時間で補うことができるのです。睡眠不足が続く忙しいビジネスマンにとって、わずかな移動時間を利用しての短時間睡眠は、大きな意味があると考えられます。
私は電車に乗って揺られると、即効で寝てしまいます。新幹線でパソコンを開けたり、本を読もうと思っても、眠さには勝てません。カラダが、「今が寝るチャンス!」とばかりに短時間睡眠モードに入るのでしょう。
逆に、寝だめはできません。長時間寝たからといって、その後、長時間起きていられるというわけではなく、寝ても寝ても眠いという経験をした方も少なくないでしょう。
睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満のもと 死亡率とも関連
「早起きは三文の損?」、京都の研究者が世界睡眠研究会議で早起きは心臓病になりやすいとの新説を発表しました。このほか、米国の研究では睡眠不足が心臓病や心臓疾患につながるとのリポートを発表しています。
適度な睡眠時間は、個々人によって異なるようです。長く寝ないと調子がおかしくなるロングスリーパーもいますし、短い睡眠時間でも大丈夫なショートスリーパーもいます。それを踏まえたうえで、「睡眠時間と死亡率」という統計データを紹介します。
この調査は、名古屋大大学院の玉腰暁子助教授らの共同研究グループが行ったもので、これによると、最も死亡率が低かったのは6.5~7.4時間。これを底として、グラフはU字型を描き、睡眠時間が短くても長くても死亡率は上昇していくという報告です。個々人の理想の睡眠時間は異なったとしても、平均7時間ほどが、健康には良いということを物語っているようですね。