専門医コラム

2016/02/01

コーヒーは、結局、身体に良いの? 目には?

49cad23354bef871147702f5880a45c6_s

不眠になる、発がん性がある──といった悪い噂から、コーヒーを控えている人は多いかもしれません。が、真相はどうなのでしょう?

スターバックス、の営業妨害にもなりかねないテーマです!? この点についてコーヒー大国の米国、ハーバード大学からいろいろな研究報告が出ていますので紹介させていただきます。

ハーバード公衆衛生大学院は、科学的根拠に基づいたダイエット&栄養の情報を、臨床医など医療従事者、メディアや一般の人向けに提供しています。その中で、「コーヒーと健康」に関するいくつかの疑問に、同大学栄養学科のロブ・ヴァン・ダム教授が、自身の研究から答えているものがあります。

コーヒー愛好家の良いニュース

ダム教授らハーバード大学の研究者は、約13万人の健康な男性と女性のボランティアを対象に、コーヒーの摂取と死亡率の関係を調査しました。

研究開始当時の対象者は40~50代で、その後18~24年間の追跡調査を行いました。期間中に、コーヒーの消費量を含め、対象者の食生活やライフスタイルの習慣を追跡し、さらに死亡した人を記録。その結果、コーヒーが、がんや心血管疾患などあらゆる原因による死亡のリスクには関係がないという結果が出ました。

さらに、1日にコーヒー6杯まで飲んだ人でも、死亡のリスクは増加しませんでした。つまり、一般の人にとってはコーヒーが、深刻で有害な健康への影響がないという説明につながる結果だと言えます。

■参考文献

American College of Physicians.「The Relationship of Coffee Consumption with Mortality

毎日飲む、コーヒーの量の上限は?

もしコーヒーを飲んで、 振戦(しんせん:意思とは無関係に起きる、細かいふるえ)、不眠、ストレスや不快を感じているようでしたら、コーヒーの害と言うより飲み過ぎだと思われます。ダム教授らの研究によれば、コーヒーを1日6杯まで飲んでも、死亡率やその他の健康への負の影響は、特にありませんでした。

ただし、注意が必要なのは、ほとんどの研究のコーヒー1杯の定義は、カフェイン100mgを含む、8オンス(=約240mL)のカップで行われていること。例えば、ティーカップであれば150mL程度、マグカップだと250~300mL程度のものが一般的なので、マグカップで6杯だと、多くなってしまう可能性が考えられます。平均的な日本人でしたらそこまでの量を一日に飲むことは殆ど無さそうです。

もう一つ、これらの研究で飲まれるコーヒーは、ブラックか、入れても砂糖やクリームを少量だということも、注意が必要です。当然ですが、コーヒーにポイップクリームを浮かべたウインナーコーヒーや甘いカフェオレを飲み過ぎれば、肥満や糖尿病の原因になりますので、ご注意ください。

コーヒーの利点を示す研究は?

ここ数年の研究で、コーヒーの摂取で、2型糖尿病、パーキンソン病、肝臓がんや肝硬変が予防されるのではないかとの発表がされてきています。また、ダム教授らの研究では、めったにコーヒーを飲まない人に比べて、定期的にコーヒーを飲む人は、心血管疾患による死亡のリスクがやや低くなることが確認されました。

目との直接の関係を調べた研究は今のところ見当たりませんが、少なくとも心血管疾患を減らす効果が確認できるということは、動脈硬化の予防効果が期待できるということです。当然、目の網膜静脈閉そく症への良い効果がありそうです。これは、血液に対する抗酸化作用のおかげと考えられますので、眼圧が正常である正常眼圧緑内障にも効果が期待できそうです。

ただし、この分野の研究は、議論が非常に活発で、まだまだ賛否両論。今の段階では、コーヒーが好きではない人に対して、健康に良いからと無理にコーヒーを飲むことを薦めるものではありません。

一般的に、妊娠中や、血糖や血圧のコントロールに悩む方以外は、コーヒーは、ヘルシーな飲み物の1つと言えると考えられます(もちろんブラックや砂糖、ミルクが少量のコーヒーに関してです)。

「議論が活発」とお伝えしましたが、次回はさらに研究者の間での論点や、「カフェイン」についてお話ししたいと思います。

ページのトップへ