専門医コラム
2016/03/04
逆まつげ
逆まつげ(逆睫毛)、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。逆まつげとは、本来外向きに生えているはずのまつ毛が、内向きになっている状態をいいます。内向きに生えたまつ毛は黒目の表面に当たり、角膜に傷を作ってしまうのです。
先日、とあるアイドルの方も内反症の手術処置を過去に受けておられると告白されていらっしゃいましたね。程度の差こそあれ、悩んでおられる方は多いようです。
逆まつ毛の種類
逆まつげには、大きく分けて以下の二つの原因があります。
- 睫毛乱生(しょうもうらんせい)
まつげが生える向きが揃わずにばらばらな方向を向いて生え、内向きに生えたまつげがあるとそれが角膜に触れてしまいます。
- 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
まつげが生えている眼瞼の縁の部分が内側にめくれ込んでいるために、瞼の皮膚やまつ毛が角膜に触れてしまいます。先天性のものならば瞼に過剰な脂肪があり皮膚が盛り上がることで起こります。また、加齢により皮膚に過剰な弛みが出たり、皮下の筋肉の筋力が低下することに寄っても起こります。
逆さまつ毛の症状、合併症
角膜には神経が集中しており痛覚が鋭敏です。その為まつげが当たったり、それによって傷が出来れば痛みや異物感を感じます。その他眼脂、充血、流涙が起きたり、角膜に傷が出来ることにより羞明(まぶしさ)を感じやすくなったりします。角膜の傷が酷い場合には、傷痕が白い濁りのように残り、見え方に影響を及ぼすこともあります。
治療方法
睫毛乱生の場合、内向きに生えているまつげを抜けば、一時的に角膜を刺激するものはなくなりますので楽になります。また、多少の睫毛乱生ならば、ビューラーでまつげの向きを変えてあげることで一時的に角膜に触れないようにすることも可能でしょう。
当院ではまつげを抜く処置をしたり、角膜に傷があったり眼脂がある場合、必要に応じて点眼薬を処方しています。
ただし、まつげはまた生えてきてしまうので根本的な治療にはなりません。また、眼瞼内反症により逆まつげとなっている場合では、1列全て内向きに生えているのに、それを全て抜き取るのも苦痛が伴います。まつげを抜くのも無痛ではありません。
根本的な治療をしようとなると、手術処置になります。
睫毛乱生に対し、レーザー等でまつげの根元を破壊する処置もありますが、痛みの割には再発も多いのです。ご希望者にはレーザーによる脱毛手術を行いますが、余りお勧めではありません。当院では患者さんのご負担も軽く済むため、眼瞼内反症の手術をお勧めしております。
皮膚切開をしない縫合のみの方法と、皮膚切開をする方法とがありますが、どちらが適応になるかは患者さんの状態によって違う為、診察を受けて頂いて医師が判断します。
どちらも局所麻酔で、短時間での処置が可能であり、入院の必要もありません。保険診療で、3割負担の方でおおよそ6,000円~8,000円程度(片眼)の費用がかかります。この他に検診費用等が必要となりますので、詳しくは各施設にお尋ねください。
いずれの処置でも術後大きな傷跡は残りませんのでご安心ください。ただし手術の性質上、基本的に術後二重瞼になりますので、見た目の変化が気になる方はいらっしゃるかもしれません。
ともあれ、まつげを抜いては生えまた抜いて・・・と症状が続くのにもストレスがかかります。ご自分でまつげを抜いてしまう方もいらっしゃるようですが、下手にいじると炎症を起こすこともあり自分でまつげを抜く事はお勧めできません。
先天性の眼瞼内反症による逆まつげについては、成長に伴い治ることも多いため3歳くらいまで様子を見ます。手術は全身麻酔が必要となるため、対応可能な施設をご紹介させていただきます。
小学生高学年くらいからは局所麻酔手術が可能となりますので、長年逆まつげに悩まれていらっしゃる方は、適応さえあれば比較的負担が少ない日帰り手術を眼科医に相談してみてはいかがでしょうか?
シニアの方が、目の不快感で目をこすっていますと症状が悪化して手術が難しくなる場合がありますので、早めの対応がお勧めです。