専門医コラム
2016/03/17
レーシック 手術の失敗!?(その②)
前回のコラムでお伝えしたように、レーシックでは一人一人の角膜の『磨く量と場所』が術後視力の質に大きな影響を及ぼすことになります。
現在のレーシックは、殆どがコンピューター制御で行われ、当院の器械では 1μm(マイクロメートル)単位で角膜を磨く量が決められます。当然、人間の手作業では不可能なレベルです。
しかし、手術のためにはこのような繊細な手術に耐えるだけの、術量を決定するための正確な『検査』が重要となります。
レーシック手術のための術前検査の重要性
レーシック手術は器械のレベルが大切になってくることは間違いありません。アイデザイン アイ レーシックでも、手術そのものはは両目合わせても20分もかからずに終了します。
しかし、手術を受ける前には10種類以上の検査を受ける必要があり、すべての検査で最適なデータを得るために個人差がありますが半日程度の時間がかかります。
以下の動画はアイデザイン検査のご案内ですが、一回の検査は短時間でも、医師が採用できる満足なデータを得るためには何度も検査を繰り返す場合があります。
そして、検査の結果を医師が分析することによって、レーザーでどのようにして角膜を削るのか位置や厚さなどを決定するのです。この検査と分析の過程がレーシック手術を成功させるために重要となります。
コンタクトレンズを使っていた方が十分なコンタクト休止期間を取らないなど、信頼性の高い検査結果が得られない場合は日を改めて再度検査をお勧めする場合もあります。マイクロメーター(1 /1000 mm)単位の正確な手術を行い、100%に近い患者さんの満足度( "失敗" をゼロに近づける)を得るためには、適切な目のデータを得るために患者さんの協力も欠かせません。
重篤な合併症 ケラトエクタジア
レーシック後の重篤な合併症にケラトエクタジア(角膜拡張症)があります。角膜を過度に薄く削った場合、薄くなった部分が前に飛び出してくる病気です。視力低下はもちろん、強度の乱視や近視化を引き起す原因になり、患者さんにとっては最悪の 『失敗』と思われることでしょう。発症確率は0.01% と言われていますので、1万人に一人程度と少なく思われるかもしれません。しかし、一人も起こってほしくない合併症です。これは術前の近視の強さと、角膜の厚さと内面(眼球内部)のカーブの形状で、ある程度発症を予測できると言われています。そのために、他院ではレーシック可能と診断されても、確実にケラトエクタジアを起こさないと判断できない場合は当院ではレーシックではなく、眼内コンタクトレンズなどの他の安全な治療をご提案する場合があります。
患者さんの100歳までの目の安全を優先しますので、そのためにも繰り返し角膜の検査を行う場合があり、『何故、こんなに何度も同じ検査を繰り返すのだろう』と心配に思われる場合もあるかと思いますが、全ては患者さんの術後満足度のためであることを、どうぞご理解ください。
それでも万が一、ケラトエクタジアが起こった場合は早期に角膜クロスリンキングを行うと進行抑制につながると研究されています。そのため、術後視力経過良好でも、当院では少なくとも年一回の定期検診をお勧めしています。また、万が一、このような重篤な合併症が生じた場合の対応も可能であるかどうか、レーシックを受ける前に確認いただくことをお勧めいたします。
次回は比較的良く起こる可能性のある合併症についてお話しします。