専門医コラム
2016/06/08
白内障手術 眼内レンズの寿命?
今回は患者さんから比較的よく聞かれる質問です。
多焦点眼内レンズの性能が良くなったことによって、近視、遠視、老眼が一度に治ってしまうようになりました。そのため、場合によっては40代の方でも手術の適応という場合が増えつつあります。老眼は40代半ばで自覚される方が多いです。老眼は厳密には白内障の初期症状です。そのため、従来より若い世代も白内障手術の適応となりつつあります。
そうすると、当然、「私の目に移植する眼内レンズはこの先50年間大丈夫なのかしら?」と疑問に思っても当然ですね。名古屋院でも長浜院でも、同じような質問をされる患者さんがとても多く、地域を問わずご自身の身体へ移植する人工臓器の安全性に対する心配は当然と言えば当然です。
白内障の詳細は、当院の白内障解説ページをご参照ください。
白内障は一般的に60歳代から症状が表れることが多いようですが、個人差も非常に大きく、70歳を過ぎても見え方に不自由を感じない人もいます。徐々に進行するため、視力の変化を感じにくく、0.1程度の視力に低下しても、「よく見えているから手術はしたくない」という方も大勢おられます。しかし治療するととてもよく見え、世界が変わるため、それまで見えていなかったことに気付いていただけることが多いです。「私の顔、こんなに皺だらけだった! 急に自分の顔が変わって浦島太郎の気分!?」と、術後に鏡を見てショックを受ける患者さんも!?
この視力回復に欠かせないのが、人工臓器の代表例っである ”眼内レンズ” です。
眼内レンズが発明されてから50年以上経過しました。日本で保険診療として採用されたのは比較的歴史は浅く、25年程です。それまでは自費での眼内レンズ購入が必要でした。
眼内レンズの素材は、わかりやすく言うと、プラスチックであり、我々が日常的にも頻繁に利用している材質です。このプラスチックは、化学的に多少の劣化は起こり得ますが、直射日光や極端な高温・低温などに長時間さらされない限りは、眼内での劣化についてはほぼ心配はありません。人体内に埋め込まれて、レンズにとって環境的に安定した状態では、人間よりもはるかに寿命が長いと考えても問題はないでしょう。赤ちゃんの先天白内障にも眼内レンズが移植されるようになっていますが、人間の寿命より、眼内レンズのほうが長生き(!?)と考えられているためです。安心して使い続けていただける、人類の英知と考えています!