専門医コラム

2016/06/26

週刊現代 白内障手術で失明の危険性

前回紹介した2016年6月25日号に掲載された「週刊現代」の医療記事が物議を醸し出しているようです。

私の専門外の疾患へのコメントは控えますが、白内障手術について以下の記事について意見を述べたいと思います。

眼科診察

白内障手術で失明の危険性

以下、記事の抜粋です。

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『眼のレンズにあたる水晶体が白く濁り、ものが二重にぼやけて見えるようになる白内障。 (中略) 「著しく生活に支障が出る場合を除き、基本的に手術は避けるべきです。リスクとして、もっとも考えられるのが、水晶体を取り除き、人工レンズを入れる時に、レンズを支える水晶体の後ろの膜が破れ、眼球の中の硝子体が流れ出してしまうこと。最悪、失明することもあります。腰や膝の場合は補助器具がありますが、眼はもし失敗したら取り返しがつかない。その認識が薄い患者さんがいますが、安易な気持ちで手術をするのはやめたほうがいい」 (中略)

「たとえば白内障で言えば、水晶体の濁りを引き起こす最大の原因は活性酸素です。本来は水晶体の中に含まれるビタミンCにそれを消去する働きがありますが、そのビタミンCが不足すると、活性酸素が大量に生じて視力が悪くなる。食生活、生活習慣を変えなければ、たとえ手術で視力が回復したとしても根本的な解決にはなりません」』

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あらゆる治療(薬、手術、リハビリトレーニング)で合併症の可能性があることは周知の事実です。どのような治療でも安易な考えで行わない方が良いことも私は賛同します。

白内障の原因が活性酸素であることにも異論はなく、私も患者さんに白内障や老眼の進行予防として「活性酸素対策」を高濃度ビタミンC点滴や患者さんの体質にあった漢方薬、食生活の改善(解毒のためのサプリメントを含む)の提案を行います。

何故なら、西洋薬や手術の前に、まずは私は病気の原因となる生活習慣の改善等、自分の体を守る力(免疫力)を高めて、患者さん自身の「治し力」で病気を治して欲しいと考えるからです。

病気の原因を無くしてから、「診断された病気」が元に戻らない状態であれば治療を考えると再発を起こさない「完治」につながります。

では「白内障」が進行して視力が落ちた状態でも「活性酸素」対策が有効なのでしょうか?

「白内障」は水晶体の本来透明だったタンパク質が濁った状態です。よく例えられるのが、「卵の白味」です。生卵がゆで卵に変わることと同様の状態が水晶体に生じた状態を「白内障」と呼んでいます。すなわち、"白内障とは卵の白味がゆで卵となって濁った状態" と考えてください。

ゆで卵の白くなった白味を透明に戻すことが出来るでしょうか?

現時点では「出来ない」というのが正しい答えですね。

同様に、一度生じた白内障はいくら活性酸素軽減対策を行っても「元の透明な状態には戻らない」のです。それどころか、ほとんどの場合は加齢とともに進行します。放置すれば視力低下は必発ですが、現在では運転免許をお持ちの方が多いため、普通免許の場合、メガネをかけても視力が0.7 に満たない場合は運転をしてはいけないと言うことになります。

「著しく生活に支障が出る場合を除き、基本的に手術は避けるべきです」と週刊現代の記事では医師の話として述べられていますが、運転免許という視点からは視力0.7 以上は必須ですから、多くの方では0.7 という視力が一つの手術適応基準となっているのが現状です。何故なら、眼鏡でこの視力に満たない場合は白内障が視力低下の原因であるならば、当然視力回復のためには手術が唯一の手段となるからです。

いろいろな対応をしても、一旦濁ったゆで卵の白味は透明には戻りません。私のこれまでの経験では、一旦白内障を生じた場合、水晶体の混濁が手術以外の治療で改善した方を見たことがありません。

白内障手術は外科手術の中でも年間150万件と言われる程数多く日本で行われている「危険性の少ない視力回復(機能回復)手術」です。もちろん外科手術ですので100%安全とは言い切れませんが、この記事にある「手術で失明」リスクがどれだけあるかという点をきちんと説明してもらう必要がります。それほど危険があるのであれば、これだけの数の手術は行われない筈です

手術に関連して失明が仮に生じるとすると、可能性が高いのは「術後感染症」だと考えます。これは、術後の傷口の管理が不十分で目をこするなど傷口に雑菌が入ってきた場合に生じます。現在の白内障手術ではごく稀ですが、数千~数万件に一件の割合で術後感染症を引き起こすケースがあると学術報告されています。記事にある「水晶体の後ろの膜が破れ、眼球の中の硝子体が流れ出してしまう」場合は、1%以下の確率で起こる可能性がありますが、多くは手術を早く行っていればこの合併症は避けられた可能性が高いのです。白内障を放置して進行したため、水晶体自体が脆くなってしまい、些細なことで簡単に水晶体の膜が破れやすくなっています。早めに手術をしておけば安全に視力回復できた方が多いのです。

では、術後感染が全て失明に繋がるかというと、殆どの方は適切な治療で視力が回復します。術後感染症に関しては入院をして抗生剤による治療や創部の洗浄などの治療がほぼ確立していますので、仮に失明という不幸な症状が生じるとしても、様々な悪条件が重なって多く見て数十万人に一人といった確率でしょうか。正確なデータを私は持ち合わせていないため推測値ですが、「白内障手術の失敗で失明した」という医学報告は少なくとも西暦2,000年以降で私の知る範囲では聞いておりません。

結論として、車の運転免許に問題をきたす視力(0.7 未満)に白内障が原因で落ちてしまった場合は私は積極的に白内障手術をお勧めしております。

白内障は必ず進行しますので、時間が経てば経つほど手術リスクが高くなります。入院も必要なく、日帰りでの10分足らずの治療で視力回復が可能です。もちろん、術後に活性酸素対策を行うことは、将来の様々な眼科以外の全身的な病気の予防にもつながりますので、私も記事に賛成します。

尚、現在の最先端の白内障治療については当院の白内障サイトをご参照ください。「白内障手術の失敗」と思われている患者さんでも視力回復できる場合が多いのです。

⇒ おぐり近視眼科 白内障専用サイト

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