専門医コラム
2016/06/27
週刊現代 白内障より危険度が高いのが緑内障手術
今回は前回に引き続き「週刊現代」2016年6月25日号に掲載された記事の中で、緑内障手術についての部分について私の意見をお伝えしたいと思います。
白内障より手術の危険度が高いのが緑内障
以下、記事を引用します。
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「緑内障手術はそもそも眼圧を下げるためであって、欠けた視野が回復するわけではありません。緑内障は、眼球の眼圧が高まり視神経を圧迫することで視野障害が起こると考えられていますが、日本人の緑内障患者の7割程度は正常眼圧です。
それでも医者として傍観するわけにはいかず、少しでも回復する可能性があれば、細菌が侵入して失明するリスクがあったとしても、手術をすすめてくる場合があるので、しっかり自分で判断してください」
さらに山口院長は「緑内障や白内障を治すのにもっとも効果的な方法は、手術ではなく食事療法や生活習慣を改めることだ」と言う。
「たとえば白内障で言えば、水晶体の濁りを引き起こす最大の原因は活性酸素です。本来は水晶体の中に含まれるビタミンCにそれを消去する働きがありますが、そのビタミンCが不足すると、活性酸素が大量に生じて視力が悪くなる。食生活、生活習慣を変えなければ、たとえ手術で視力が回復したとしても根本的な解決にはなりません」
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大事な点は「日本人の緑内障患者の7割程度(8割以上という説もあります)は正常眼圧」という点です。眼圧が正常な方で、眼圧を下げる治療がどれでか有効かということに眼科医の議論があります。
そもそも "正常眼圧を10〜21mmHg と規定" していることが、日本人に適していないという説もあります。
また日本人の緑内障の7割以上を占める眼圧が正常である「正常眼圧緑内障」 は眼圧以外の要素が原因であるという説も有力です(私は活性酸素等、全身的な問題の一形態が視神経に現れたものが正常眼圧緑内障と捉えています)。
しかし、眼圧が高い場合は、多くの研究データから視神経萎縮が進行し失明に向かっていく確率が高くなるということも周知の事実です。緑内障手術が適応となるのは、薬物治療を行っても、どうしても眼圧が下がらず視野欠損が進行する場合だと考えます。活性酸素が視神経を痛めるという考えには私も賛同しており、まずは活性酸素軽減する治療をお勧めしますが、眼圧上昇が長期間続く場合は活性酸素治療の効果が出る前に視神経が傷んでしまうと、「一度死んだ神経は元に戻らない」ために回復できなくなってしまうため、どうしても緑内障手術が必要な場合があります。
雑誌の限られた紙面で、このような手術適応について十分記載されていない可能性もありますが、数少ない「細菌が侵入して失明するリスク」よりも「放置して失明するリスク」を比較して、手術を勧める眼科専門医が多いのが現状だと考えます。
私も、どうしても高い眼圧が下がらない場合は、最後の手段として緑内障手術を患者さんにお勧めすることがあります。
仮に手術で眼圧が下がったとしても、緑内障手術は白内障手術より失明につながる可能性のある眼内炎を起こしやすいことも医学研究データで知られていますので、術後管理をよりきちんと行う必要があります。加えて、『食生活、生活習慣を変えなければ、たとえ手術で視力が回復したとしても根本的な解決にはなりません』という意見にはまったく同感で、そのために当院では緑内障の根治を目指して原因診断、治療をお勧めしています。詳しくはこちらをご覧ください(⇒ 緑内障の検査、治療)。