専門医コラム
2016/09/06
眼瞼けいれん 40%の患者さんが発症前に神経用剤を連用!
瞼や目の周囲の筋肉がピクピク痙攣するとの訴えで受診されることが良くあります。「眼瞼けいれん(痙攣)」という診断名で、全身的なアレルギーの治療や漢方薬の服用で一時的に軽快はしてもなかなかスッキリしない場合や、薬の治療で改善しない場合があります。
まぶたの下がり(眼瞼下垂)が起こっていて、目の周囲の痙攣に繋がっている場合もありますが、今回は薬の副作用としての眼瞼けいれんについてご紹介します。
(眼瞼下垂による眼瞼けいれんについてはコチラ)
大脳など神経系に働く薬物の連用が眼瞼けいれんに繋がる
この疾患に詳しい、眼科医の若倉雅登医師は以下のように述べておられます。
「目を開けていることが困難(専門用語では開瞼困難)な 眼瞼 けいれんという病気 でも、眼痛、羞明、霧視といった感覚過敏症状がほぼ全例に出現します。この病では、ベンゾ系を含む大脳など神経系に働く薬物の連用が原因の場合がかなりあることを、私たちは2004年に英国科学誌で発表しています。それを私はことあるごとに学会などで強調していますので、だんだんと知っている眼科医は増えてはきています。」
眼痛、 羞明 (まぶしさを過剰に感じる)、 霧視 (霧がかかったように見える)は、ベンゾジアゼピン(以下ベンゾ)系薬物や、エチゾラム、ゾルピデム(ベンゾ系とは異なる分子構造を持ちながらも、薬理作用はほぼ同等)といった類似薬の連用で生じやすいのです。ただ、そのことを多くの眼科医は気づいていませんし、こうした薬物を多く処方している、内科、精神神経科、神経内科、心療内科(メンタル科)や整形外科などの医師はほとんど知りません。
若倉医師によると、経過を診ている眼瞼けいれん患者の40%近くもが、神経用剤を発症以前に連用していることがわかりましたので、薬物性は決して珍しいものではありません。眼瞼けいれんにおける感覚過敏症状と、開瞼困難があまりない感覚過敏症状との境界は明確ではないのですが、後者を「ベンゾジアゼピン眼症」と称することを若倉医師は提唱しはじめています。
ところが、この場合の目のさまざまな症状は、視力や視野検査には影響が出ず、眼科的診察で、眼球にも症状を説明できるような異常が見つかることはありません。そのため、眼科医やほかの科の医師も、日常生活に大きな影響を与える重篤な症状としては認識しにくいようです。
副作用が生死に関わるものや、失明しうる状態になれば、医師も製薬会社もさすがに真剣になるでしょう。ところが目が痛い、眩しいなどは、たぶん「背中が 痒 い」程度にしか聞こえないのでしょう。「目が見えているなら、ほかの 些細 なことは我慢せよ」といった感覚のようです。
患者本人としては、非常に 辛 く、生活の質を落としているために眼科を受診します。もし上記のような薬を使っているようでしたら、眼科受診時に医師にお伝えいただけますと診断と治療に有用ですので、是非覚えておいてください。