専門医コラム
2016/09/09
視力低下の原因にうつ病? 精神科医も眼科医も見逃しやすい…
うつ病が増えているなどの報道を見かけます。精神科疾患全般に言えることですが、うつ病の診断は血液検査など数値を根拠にしたり、脳の画像で決まったりするものではありませんので、専門家でも診断が必ず一致するとは限りません。治療についても、例えば血液検査でこの数値を超えたら、この薬を使用する、といった「治療基準」が各医師のとらえ方や、主観に左右されやすいのが精神科疾患の特徴です。
「うつ病」診断の難しさ
米国精神医学会や世界保健機関(WHO)では、そういうことがなるべく起きないような診断方法として、統計的に決められた診断尺度を利用した診断方法を示して、改定を重ねています。日本でも1980年代後半頃から、その考え方が徐々に導入されるなど、例えばうつ病の考え方にも歴史的変化があります。
しかし、明確に「うつ病」「 躁 うつ病(双極性障害=うつ病とは診断、治療とも異なる別の病)」と診断できる基準に入らないと、「うつ状態」などといった、基準にはない、あいまいな病名が、今でもつけられています。
うつ病にはさまざまな身体症状、たとえば意欲低下、睡眠障害や消化器症状が出現しやすいことが知られています。ところが、医学書には視力低下という眼症状は書かれていません。
残念ながら未成年では、精神科を受診するケースも少なく、「うつ病」の疑いさえ両親や家族も認識がないことが少なくありません。しかし、最近では小学生から、「うつ病」のための視力低下ではないかと疑われる患者さんが増えているように思います。
視力不良とうつ病
学校での視力検診で視力低下を指摘されて受診される子供さんで、矯正視力(最善の眼鏡で矯正した視力)が、例えば、右0.3、左0.4までしか上がらないようなケースに遭遇します。それを説明できる病変はいろいろな検査をしても見つからないことが多く、何度か視力検査を日を変えて行っても改善が認められないといった患者さんが近年増えている印象です。
場合によっては心療内科等を紹介するのですが、子供さんを心療内科や精神科に受診させることはご両親に抵抗がある場合が多く、殆どは眼科での経過観察を行います。うつ病かな、と疑ってはいても、診断を眼科で行うには難しいこともあり、そのために以下のような眼科疾患との関連を知っていただくために動画を作成致しました。
うつ病で、視力低下という眼科的症状が生じる可能性があることを認識している精神科医も、眼科医も大変少なく、ましてや未成年の患者さんですと、「気分の問題だろう」と見逃されやすいのではないかと考えます。
大事なのは「治ること、視力が回復すること」です。薬物に頼っていてもうつ病の完治は期待できません。このうつ病の原因として「栄養障害」が注目されており、子供さんの視力低下が「食を変えること」で改善する可能性が高いことをご理解いただければ幸いです!