専門医コラム
2016/09/17
スマホだけじゃない!若年性老眼の原因
若年性老眼を引き起こす原因はいくつか考えられますが、その多くは若い人のライフスタイルと関係があります。前回に続いて若年性老眼を引き起こす原因を述べてみます。
VDTの長時間使用
第一にあげられるのはVDT(Visual Display Terminal Syndrome)の使用時間。
VDTとはパソコンやスマホなどディスプレイをつけた端末機器の総称です。若い世代の人ほどVDTを長時間、頻繁に使用する傾向があるため、目に与えるダメージが年々大きくなっています。
パソコンやスマホ、タブレット端末などの使用が日常的になり、生活上欠かせないものになっている人ほど目にかかる負担も大きくなります。若い世代のライフスタイルそのものが眼の酷使につながっているといえるのです。
生活習慣により眼にかかる負荷が大きくなると、水晶体の厚さを調節してピントを合わせる毛様体筋や眼に入る光を調節する虹彩括約筋など眼の筋肉は休むことなく働き機能障害を起こします。その結果、若年性老眼の症状に繋がるのです。
この問題解消のために、目の筋肉をほぐすトレーニングが有効です(目の筋トレ! イルカロゴ追視トレーニング)。
ブルーライトの影響
VDTから発生するブルーライトの影響も大きく関わっています。今のパソコンや携帯機器の多くにはディスプレイの明るさを高めるためにLEDや様々な照明装置が組み込まれていて、その光による影響が若年性老眼を引き起こす要因になっています。
ディスプレイを明るく見せるためには画面から強い光を発生させる必要があります。可視光線のうち紫外線の領域に近い光ほど明るくなるという光の性質が応用され、ディスプレイの照度を高めています。
つまりディスプレイから受ける光は分解すると紫外線が多く入った光ということなのです。紫外線は眼の網膜や視神経に直接吸収されるため、VDTから発生する紫外線によって眼の細胞や筋組織がダメージを受け、若年性老眼の原因となってしまいます。
明るく見やすい画面ほど、実は紫外線の量が多く視神経や網膜にダメージを与えるという現象が起こっているのです。
この対策には専用メガネの使用が有効です。電磁波についても対策されている商品は多くはないので以下の過去コラムをご参考になさってください(紫外線とブルーライト、更に電磁波をカットして眼を守る)。
ドライアイ
パソコンやスマホを操作する場合は、何らかの情報を自分から積極的に探していることが多いですね。明日の天気、電車の時刻表、料理のレシピなど、すべて自分から率先して、能動的に情報へコンタクトしているはずです。
積極的に情報を得ようとしたとき、身体は交感神経優位になります。眼に起こる現象は瞳孔を大きく開き、瞬きの回数が極端に少なくなります。瞬きの回数が少なくなると眼の表面を覆う涙液や角膜の奥の眼内で循環している房水という液体の流れが減少します。
涙液や房水が減少することで角膜や水晶体が傷つきやすくなり、ピントを調節する毛様体筋の活動が低下したり筋組織が壊れたりするのです。何気なく眼に入ってくる景色を眺めるときと積極的に情報を捕らえるときの眼の負担は異なるのです。
さらに細かい字を読んだりする場合など、画面に集中すればするほど涙液が減少しやすくドライアイが起こりやすくなります。ですからスマホの小さな画面を操作するときなどは、眼の負担はとても大きくなっているのです。
うつむく姿勢
若年性老眼を引き起こす原因の1つとして、うつむく姿勢もあげられます。姿勢と視力にどんな関係かと疑問が湧きますね。問題になるのは眼圧です。眼圧は目の内側から外にかかる圧力で、眼球が潰れずに球形を保っているのはこの圧力のおかげです。
実は眼圧が一定であることによって、目の形が丸くなり光をとらえる網膜をしっかり伸ばして眼球の壁に内張のようにしっかり固定することができているのです。また水晶体の表面から角膜の内側には房水という涙に似た液体が流れていて水晶体を守る働きをしているのですが、これも眼圧によって流れています。
スマホなど携帯端末をうつむきながら使用している人の姿をよく見かけます。うつむく姿勢が多くなると眼球が下を向くので眼圧が上昇し、毛様体筋が圧迫されたり網膜から脳へつながる視神経が圧迫されたりして視界の歪みに繋がります。
若年性老眼を起こす要因にはうつむく姿勢も関係しています。あまり前かがみになって操作をしないように、姿勢を正しく保ちながらスマホなどを使用することも大切です。
ストレス
若年性老眼には日頃のストレスも関係します。若年性老眼の症状を訴える人の生活状況を調査すると、ほとんどが日頃から精神的な強いストレスを抱えていることが分かります。
日常的にストレスを抱えていると体内で活性酸素が大量に発生します。活性酸素が発生すると正常な細胞までダメージを与えることになり、とくに眼の細胞や神経に悪影響を及ぼします。
眼の網膜は映像を写すフィルムのような働きをする部分なので、光を細かく捉える必要があり、とても細い血管が縦横に張り巡らされています。人間の身体の中でも最も繊細にできている部分の1つなので、活性酸素によるダメージを受けやすいのです。
大切なことは活性酸素に負けない「免疫力」を身体に備えておくことです。残念ながら若年性老眼になる方には免疫力が低下する生活習慣をされているケースが多いように思われます。
食生活の乱れ
免疫力の基本は身体を作る「水」と「食」の質です。食生活の影響がほぼ全ての病気に大きく影響すると考えられます。眼に必要なビタミンやミネラルが不足したり高血糖の状態が続くと眼の機能全体が影響を受けてしまいます。眼に限らず栄養は全ての臓器や器官を正常に働かせる基本になるので栄養にも配慮することが大切です。