専門医コラム
2016/10/04
近視治療について 〜 医者は患者さんの気持ちを理解している?
視力低下したため眼科を受診して「近視」と診断された方は、その際、眼科医にどのように対応について説明を受けたでしょうか?
医師の近視への考え
「近視は現代生活への適応」だから、「近視になったらメガネかコンタクトレンズで視力矯正」と、簡単な説明しかされなかったケースが多いのではないでしょうか?
「近視を治しましょうか」と眼科医から提案を受けた患者さんはどれだけいることでしょうか? 私が患者さんに「裸眼視力を回復して、メガネやコンタクトを使わずに裸眼での生活を希望されますか?」と尋ねても、裸眼視力を良くすることができると知っている患者さんもまだまだ少数派です。
眼科医も患者も近視を治そうと考える方は少数派
何故、多くの眼科医からは視力を回復するという選択肢が示されないのでしょう。
患者さんに「近視を治したいですか?」と質問すると、ほとんどの方は「可能であれば治したい」とお答えになります。
近視を治したい人は多いのに、例えばオルソケラトロジーやレーシックで裸眼で生活できることが可能な時代となっているのに、こうした治療を取り扱う医療機関がまだまだ少ないのでしょうか。
以下、考えられる理由を示してみます。
① 医師が大学で教えられたことしか対応しない
② 近視は治ると教えられていない
③ メガネ処方に興味が無い
④ CL処方も興味が無い
⑤ 白内障をはじめとした高齢者の治療は教育されるが子供の治療は少数派で、しかもメガネ治療しか教えられず
⑥ CL処方に力を入れると、経営が成り立たない(すでに保険診療はこの分野では崩壊)
⑦ 近視治療はレーシックを始め、自費診療が多いため、保険診療のみの対応をしている医療機関が圧倒的に多く、自費診療への対応に多大な経営的負担がのしかかる
実際、自費診療は医療機関の経営を圧迫する場合が少なくないため、保険診療に採用されていない近視治療は、医療経営的に眼科医にとって高いハードルともなっています。
患者さんが近視を治して欲しいという希望は受け止めているが、経営リスクを冒してまで近視治療に踏み切れない、というのが多くの日本の眼科医の心情ではないかと思います。
決して近視を治したいという患者さんの気持ちを無視しているわけではないのです。
実際、眼科医の研究学会では近視治療テーマが増えてきています。眼科医も自分の子供が近視になることを危惧して、身近な問題として捉えられている方が増えてきていると思います。