専門医コラム
2016/10/06
コンタクトレンズの将来は?
安全性を理解してうまく利用すれば、近視や遠視、乱視で裸眼視力が悪くて生活にお困りの方には特に使い捨てコンタクトはとても便利な道具です。
人類の英知とも言えます。
カラーコンタクトレンズ(カラコン)など、ファッションとして広告宣伝して「化粧品」のように定着してしまった派生品もありますが、裸眼視力が問題なければ不要な道具なのです。
このまま生涯、コンタクトレンズを使いますか?
コンタクトレンズをビジネスの商品としてメーカーの立場で考えてみましょう。ビジネスとして今後売り上げを伸ばせるかどうか? 明るい未来は・・・?
近視を治すという選択が増えると、当然、このコンタクトレンズマーケットは縮小するでしょう。もちろん一度に数十万円の近視手術費用を出すことが難しいという方は、月数千円を支払いながらコンタクトレンズを使っていくかもしれません。
ところが以下のようにコンタクトレンズを使うより、近視手術で治したほうが経済的な場合が圧倒的に多いことにどれだけの方が気付いているでしょうか?
使い捨てコンタクトレンズの費用
一回の支払は1箱3,000円位のため安いと感じても生涯に支払う金額ご存知ですか?
35年間(15〜50歳)使用すると
2週間使い捨てレンズ 約3万円/年 X 35 = 105 万円
1日使い捨てレンズ 約8万円/年 X 35 = 280 万円
2週間使い捨てコンタクトはケア用品の費用も含んでいますが、毎日のレンズ洗浄の手間は必要です。ケア不良でコンタクトレンズトラブルを生じている方が多いため、必ず使用方法を守ってレンズやケースの洗浄を行なって下さい。
50歳を過ぎても、60歳を過ぎてもコンタクトがやめられない(メガネの顔を人に見せたくない、などの理由から)方が増えています。
それだけ長期間コンタクトレンズを使っている方は、ご本人は気付かなくても様々な問題が目に起こっていることが多いのですが・・・。
裸眼で生活していれば生じない障害です。
具体的には角膜の酸素不足による、角膜の脆弱化、感染を生じやすくなり視力低下の後遺症(角膜が混濁するとコンタクトでも視力が上がらなくなる)、ドライアイやアレルギー性結膜炎の悪化、まぶさの下り(眼瞼下垂)、眼精疲労、様々な不定愁訴(頭痛、肩こり、腰痛、時には更年期障害と間違えられる場合もあります)など、枚挙に暇がありません。
最近は男性でもおしゃれのためにカラコン(カラーコンタクトレンズ)を使用する方が増えてきています。さすがに毎日使用する方は少ないようですが、時々カラーレンズを使用するとなると、上記費用は更に高くなりますし、乱視の強い方も高くなります。
普段はコーヒーを飲むにも、『どこどこのコンビニは150円だけど、某ファーストフード店は120円だから、ちょっと遠いけれどファーストフード店で飲もう』 などと考える人は私だけでしょうか? 日常ではスーパーの特売は言うに及ばず、100円の違いは大きいのですが(!?)、近視になるとお金がかかりますね。
ご主人の毎月のお小遣いを減らすより、近視にならない方が家計への貢献は大きそうです。
欧米先進国では安全性と経済性を考慮して "手術" を選択!
合理的な欧米人は生涯通じての安全性と経済性を考えて、近視手術を選択される方が増えています。反対にコンタクトレンズの販売量は減少していると言われています。そのため、コンタクトレンズメーカーにとっては近視大国の日本は重要なマーケットとなっています。売り上げを確保するために某大手コンタクトレンズメーカーの医療機器としてのモラルに反した販売方法をめぐって日本眼科学会と確執が生じていることは眼科専門医医がよく知っていることです。名古屋院の周辺では、コンタクト量販店がしのぎを削っています・・・。ネット販売を含めて、残念ながら売上至上主義となっている可能性は否定できないと思います。“安全性”は建前のみとなりつつあるかのようです。
しかし、コンタクトレンズ研究に関して長年力を注いできた日本コンタクトレンズ学会も、研究費や活動費の減少に伴い様々な倫理的活動能力の低下に直面しています。
円錐角膜という病気や、特殊なケースでは治療用コンタクトレンズは現在でも必需品であり、今後もコンタクトレンズがなくなることはないと思いますが、近視手術の安全性、経済性の事実が一般によく知られるようになると欧米同様、コンタクトレンズの販売量は日本でも減少すると思われます。
そうした場合、ますますコンタクトレンズは安全性より、販売優先ビジネスとしての傾向が強まるのではないかと危惧されます。