専門医コラム
2016/10/19
飛蚊症と網膜剥離
レーシックなどの近視治療した方に注意が必要な疾患の一つに「網膜剥離」があります。
特に近視が強くてレーシックが適応外となり、ICL などの眼内コンタクトレンズが適応となるような強度近視の方は近視がない方に比べて網膜剥離が起こりやすいことが知られていますので、目の前に何か飛んでいるけれど捕まえられない「飛蚊症」と呼ばれる自覚症状が生じた場合は早めに眼科を受診してください。
網膜剥離とは
網膜剥離は、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、初期は視野が欠けてきて、進行すると視力も低下する病気です。
網膜は、目の中に入ってきた光を刺激として受け取り、脳への視神経に伝達する組織で、光をとらえる役目をしています。カメラでいうフィルムのはたらきをしています。
網膜の剥がれは痛みを伴わないため気付きにくいのですが、前兆として先に述べた飛蚊症があらわれることが多いです。また、網膜の中心部である黄斑部分まで剥がれた場合、急激に視力が低下し、失明に至る場合もあります。
網膜剥離の原因
網膜剥離は、加齢や糖尿病網膜症などの眼科疾患、事故などによる頭部や眼球への物理的ショックが原因で生じます。いずれも網膜が破れて(網膜裂孔)、その裂け目から網膜が剥がれていきます。
眼球の中は硝子体(しょうしたい)というゼリーのようなゲル状物質で満たされています。硝子体が網膜に強く接着している部分があり、何かのきっかけでこの一部が網膜を強く引っ張り、網膜に小さな裂け目ができてしまうことが網膜剥離の始まりです。
裂け目をそのまま放置しておくと、この小さな穴から網膜とその下の層との間にどんどん眼内の水分が入り込んでいき、最終的には網膜が眼球の内壁から剥がれてしまいます。
治療法
レーザー治療(網膜光凝固術)
網膜にできた裂け目を塞ぐ処置には「光凝固術」があります。瞳孔から網膜の穴にレーザーを照射し、焼き付けます。この処置をすると、裂け目の周囲の網膜とその下の組織がくっつくため、網膜が剥がれにくくなります。外来で15分程度で日帰りで治療が可能です。この治療で網膜剥離が治癒すれば、通常視機能に大きな障害は残さず、視力も保たれ、処置当日にお風呂に入っても問題ないほど、処置後の管理は生活に大きな支障は来しません。
網膜剥離手術(網膜復位術)
すでに網膜剥離が認められる場合には、剥がれた網膜を元の位置に固定する必要があります。そのための手術には、「硝子体手術」や「強膜バックリング法」などがあり、網膜剥離の症状に応じて対応が異なります。基本的に、入院手術となり1~2週間程度の入院期間が必要となります。
網膜復位術後の注意点
手術後に目を動かしても、手術の結果に大きな影響はありませんが、眼内の状態が落ちつくまでに1~3カ月必要です。少なくとも術後1カ月間は、疲れない程度に目を使用して下さい。事務や管理職の方は、手術後1カ月目から、運転手や重労働の方は2カ月頃から仕事に復帰できます。日常生活でも、術後1カ月間は重いものを持ったり、走ったり、車の運転をすることなどは避けて下さい。
早期発見のために
網膜剥離は、治療が早ければ早いほど視力への影響が少ないので、早期発見と速やかな治療が大切です。次のような症状が気になる場合は、眼科で検査を受けましょう。
- 目の前を蚊のような黒く動くものがちらちら見える(飛蚊症)
- 暗い場所で突然稲妻のような光が見える(光視症)
- 急に視力が低下
治療費用
治療は保険診療の対象ですので、患者さん毎に負担割合により異なります。
外来でのレーザー治療(網膜剥離裂孔)は3割負担の方で、大体6万円ぐらいです。
レーザー手術では止めきれない、入院手術が必要な網膜剥離の場合は「網膜復位術」の費用自体は3割負担で約6万5千円ですが、使用する薬剤は膨大で入院費用もかかります。この場合は最低でも20万~30万円は見ておいたほうがよいでしょう。
上記いずれの治療も加入されている生命保険で手術給付金が出る場合があるので、保険会社に問い合わせてみることをお薦めします。
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