専門医コラム
2016/10/30
近視になりやすい長男長女 弟妹より「損」?
今回は英ガーディフ大のジェリミー・ゲンハイム教授らのグループが、2015年11月の米医学会誌「JAMA眼科版」(電子版)に発表した論文からご紹介します。
高い学歴だと近視になりやすい環境におかれる
近視は、現代病の1つで、世界中の若い世代に急増しており、遺伝や屋外活動の時間、学業・仕事などの生活環境との関係が指摘されています。はっきりした理由は不明ですが、一般的に長子の発症率が高いといわれ、イスラエルの学者による「15~22歳の若者では、近視になる確率は、長子の方が次子以降よりも約10%高い」という先行研究があるのです。
そこで、研究チームは、中年以降の世代でも長子の方が近視になる割合が高くなるのか調査しました。また、その理由として「両親の教育熱が長子では一番高く、次子以降に次第に冷めていくため」という仮説を立て、証明を試みました。そして、英国バイオバンク登録者で40~69歳の8万9120人を対象に、生まれた順と近視のリスクについて、性別、年齢、最終学歴、生活環境などを調べました。
その結果、次の結果が導き出されました。
(1)近視になる危険性は、長子が次子以降よりも12%高い。これが強度の近視になると、21%に高まる。
(2)ただし、統計学的に「学歴補正」を行うと、生まれた順の関連性が25%弱まり、それぞれ近視になる危険性が9%、強度の近視が15%に下がった。「学歴補正」とは、長子の学歴が高く、次子の学歴が低いなどの「兄弟間の教育格差」を考慮して発症のリスクを計算し直すのだ。
(3)(2)の結果から、兄弟間の学歴差がなくなるにつれ、近視の発症率の差が少なくなった。逆にいうと、両親の教育熱が冷めることが、次子以降の近視の発症率の減少につながることがわかり、仮説が立証された。
今回の研究について、ゲンハイム教授は「調査では、より早く生まれた子ほど学歴が高くなることがわかっています。高い学歴が彼らを近視になりやすい環境におくのです。たとえば、職場にいる時間が長くなり、屋外で過ごす時間が少なくなります」と語っています。
問題は、こうした「高学歴の近見作業ストレス」、主として勉強時の近くを見続けるストレスに対して、身体が受け入れられるか、すなわち免疫力がストレスを防ぎきれるのか、が近視化にとって重要なポイントだと考えます。何故なら「近視とは、「眼球過剰成長病」」だからです。詳しくはこちらのコラムを参照ください。(→ 近視とは、「眼球過剰成長病」)
免疫力を弱める原因を解消し目の過剰成長を抑えること、またストレスを減らすために出来る対応を行うことで近視の予防が可能と考えます。