専門医コラム

2016/11/04

お子さんにあざができやすい アレルギー性紫斑病では?

知らない間にお子さんの身体に皮下出血! 特にぶつけたわけでも、けがをした記憶もないのに・・・。知らない人が見たら、親が虐待したのではないかと勘違いされたらどうしよう!?

お子さんの身体にあざができやすいと思ったら、実はアレルギー性紫斑病が見つかった、という場合があります。アレルギー性紫斑病は、時には関節痛で歩けなくなる、激しい腹痛を伴うなど、重篤な症状が出るかもしれない病気です。

アレルギー性紫斑病とは?

アレルギー性紫斑病とは、アレルギー反応(過敏性反応)により血管に炎症が起こり、血管から出血しやすくなることが原因で、皮膚に紫斑が現れると考えられている病気です。内出血であらわれる紫色や赤色の斑点(はんてん)状の発疹が主に足に出ます。

からだのどこにでも生じますが足やお尻に出ることが多く、「アナフィラクトイド紫斑病」「血管性紫斑病」「IgA血管炎」「ヘノッホ-シェーライン紫斑病」などと呼ばれることもあります。

眼科では「結膜下出血」と呼ばれる、白目が出血で急に真っ赤になる症状や、アレルギーに伴う様々な眼疾患に繋がる場合があります。

原因

アレルギー性紫斑病の原因は、現在のところ何らかの理由によって血液中のIgA抗体(異物から体を守る免疫力をたかめるタンパク質の一種)に異常をきたすことが原因ではないかと言われています。

アレルギー性紫斑病を発症する前に、しばしば、かぜ等の症状があることが多いため、細菌やウイルスへの感染でアレルギー反応を起こることや、食べ物や薬剤などでアレルギー反応を起こすことなどが原因として指摘されています。また、虫刺されや薬の服用などで発症することもあります。

かかりやすい年齢

アレルギー性紫斑病を発症する年齢は3~10歳の小児が最も多いと指摘されています。女の子よりも男の子の方が比率が高めであり、2倍程度の頻度があるとの指摘もあります。ただし、成人でも発症することがあります。

発症率

アメリカの報告では17歳以下の小児の人口10万人につき約20人に発症すると言われています。4~6歳が発症のピークと言われています。アジア人、白人は黒人より発症しやすいといわれています。

アレルギー性紫斑病に関する発症率の統計データは日本ではあまりとられていないようです。

発症のきっかけ

アレルギー性紫斑病を発症する前には、かぜなどの症状があることが多いため、特に小児の場合A群溶連菌感染症などの細菌感染やウィルス感染が発症のきっかけとの指摘があります。

(A群溶連菌感染症とは、A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)によって引き起こされる感染症で、小児に多い急性の咽頭炎です。咳やくしゃみなどの飛沫感染と、手指を介して感染する接触感染で感染します。)

これらのウィルス感染後1~3週間後、アレルギー性紫斑病を発症することが多いと言われています。

アレルギー性紫斑病の症状

まず、目に見える症状としては、紫色や赤色の斑点状の発疹(紫斑:しはん)が足やおしりにでます。患部は少し盛り上がっていて、多くの場合、両方の足に対称的に出現するとの指摘があります。

靴下や下着などで圧迫されたところに強く出現することもあるようです。簡単な診断としては、赤い部分を指で押して、赤色が消えない場合は出血斑と判断できます。

腹痛

アレルギー性紫斑病では腹痛を伴うことが多く、約50%で腹痛を伴うとも言われています。また、皮膚に紫斑が出る前に、腹痛が発症するため、診断が難しいことがあります。

幼児の激しい腹痛のため、食事ができない、看病が大変なほどの状態になることもあります。その場合は入院して検査した結果で、アレルギー性紫斑病であることが判明することが多いです。

血便、血尿

アレルギー性紫斑病では、上記のように腹痛とともに、吐き気、嘔吐、下痢が、よくみられると言われています。血便、血尿が出ることもあります。

まれに腸が折り畳み望遠鏡のように腸自体に入り込むことがあります。腸重積(ちょうじゅうせき)と呼ばれるこの合併症が起こる原因はよくわかっていませんが、腸重積が起こると腸への血流が阻害され血流が2~3時間以上止まることもあります。この場合は腸の一部が壊疽(えそ:壊死してしまうこと)を生じ腸に小さな穴が出来ることがあります。細この穴から菌が入ってしまうと重篤な感染症(腹膜炎)が起こる可能性が高まります。こじらすと恐ろしい病気ですので早期に受診が必要です。

足の関節の痛み

アレルギー性紫斑病によって、関節痛、関節炎が発症することがあります。アレルギー性紫斑病患者の3分の2に発症するとの指摘があります。痛くて歩けないという症状を訴える子供も多く、痛みが強い時期には、はれを伴って、歩けなくなるほど重症化する場合があります。

手足

アレルギー性紫斑病では、足の関節近辺やふくらはぎがはれることが多いようですが、頭部、顔面、背部などにも、はれが起こることがあるとの指摘があります。また、手足のむくみが起こった場合は、紫斑病性腎炎(じんえん)を疑う必要があります。

合併症にも注意!

アレルギー性紫斑病では、様々な合併症にも要注意です。

紫斑病性腎炎

50%程度で尿に蛋白尿(たんぱくにょう)などの異常が認められて、腎炎が疑われる場合があるようです。アレルギー性紫斑病を発症して1年程度あとに出現することもあるため、定期的な尿検査が必要になるとの指摘があります。腎炎が進行すると、重症な腎炎(急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群)に進行する場合もあるとの指摘がされています。

・腸重積症

アレルギー性紫斑病にかかると、腸重積を発症する場合があると指摘されています。上述のとおり腸重積は恐ろしい病気です。早期の発見が必要です。乳幼児に起こることがあり、大変危険な状態になることがあるようです。

腸重積になると、腹痛と嘔吐が起こります。痛みの発作は20分程度続きます。痛みの発作と発作の間に、怒りっぽくなったり、ぐったりしたり、無気力になったりすることがあるようです。

治療を行わないと痛みは継続的に発生します。血と粘液の混じったアカスグリのジャムのような便をしたり、発熱したりする場合もあります。腹部を触ると痛がります。

このような症状になったら至急、医師の診断を受ける必要があります。場合によっては手術の必要もある重大な病気の一つです。

次回は治療法についてお伝えします!

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