専門医コラム
2016/12/11
視力1.5の問題
人間は、遠くを見るときは交感神経が優位に、近くを見るときは副交感神経が優位になります。遠方の敵や獲物を見つける必要があった生物の進化の中でそうなったのです。ところが、仕事でパソコンやスマートフォンを多用するようになったことで、脳や身体は交感神経優位なのに、手元を見ることで目のピント合わせは副交感神経が優位になってしまいます。その結果、自律神経のバランスが乱れることに繋がります。
メガネやコンタクトレンズが自律神経バランスを崩す
近視の人の多くは「よく見えるようになりたい」と眼鏡やコンタクトレンズで矯正しています。処方する施設にもよりますが、廉価なメガネやコンタクトレンズ量販店やネット販売では過矯正になりがちです。
もちろん遠方視力が良いに越したことはないのですが、日本人の場合、小中学校で実施する視力検査で、“視力の数字が高いほうがいい目”と思い込んでしまう傾向がありそうです。“視力1.5や1.2はいい目”、“遠くが見えるほうがいい目”という固定概念ができると、”近視を悪者扱い” する風潮が形成されているかもしれません。
そもそも、レンズの役目をする水晶体の調節力は、20代ぐらいまでは高く、近くも遠くも瞬時にピントを合わせられます。しかし、30代を過ぎたあたりになると加齢により水晶体が硬くなり、水晶体の厚さを調整する毛様体筋の筋力も落ちていきます。この状態が、スマホに代表される長時間の近くを見る作業で20〜30代でも近くが見づらくなることが、”スマホ老眼” です。
大人の視力矯正は、ライフスタイルに合わせることが大切です。『視力1.0ぐらいほしい』などと漠然と視力の "数値” を希望されますが、それより『どの距離を見えるようにしたいのか』が重要です。先のスマホ老眼のように、現代においては近くをしっかり見られるほうが理想的というケースも多いからです。
生活シーンでピントを合わせたいときに便利なのがメガネに使われる「累進(るいしん)屈折力レンズ」と呼ばれるものです。1枚のレンズのなかに場所によって異なる度数が配置されているもので、「遠近」「中近」「近近」などのタイプがあります。手元のメモとパソコンをしっかり見たい、少し離れた場所とパソコンを見たい、テレビを見るときと運転するときによく見えるほうがいいといった一人一人の希望に応えることができます。
パソコンで仕事をする人であれば、30代半ばを過ぎたころからこの累進屈折力レンズを使うことで目の負担を和らげることができます。
遠近というと老眼鏡のイメージがありますが、今のレンズは境目がなく、単焦点レンズと見た目は変わりません。老眼のごく初期から使うことで、自覚症状の感じ方もゆっくりになり、何より目が疲れず、身体への負担も軽くなります。
もっとも、老眼は水晶体の酸化現象によって厚みの調整が困難になる状態です。この "酸化” を食生活を始めとする生活習慣で遅らせることができれば、比較的高年齢まで老眼に悩まずにすむ場合もあります。当院で推奨している高濃度ビタミンC点滴や高濃度水素吸入療法はそうした "酸化抑制効果" が期待できます。
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