専門医コラム

2016/12/15

視力悪いと認知症になる?

「年だから見えなくても仕方ない」「眼を手術するのは怖い」など、白内障手術に踏み切るのは案外ハードルが高いものです。手術と聞くと、多くの方は抵抗があるでしょうし、物を見ている「目」にメスと入れるなんてとても考えられない、という感覚を持つのが普通だと思います。

しかし、現在では多くの白内障は点眼麻酔で痛みもなく、10分足らずで安全に視力回復が可能です。外科手術の中でも最も安全とも言われるくらい手術後の成績も良いのです。

視力は感覚情報の8〜9割を占めると言われるくらい、一人一人の生活にとって欠かせない重要な能力です。そのため視力を改善するとQOL(生活の質)の向上とともに、認知機能改善が期待され研究が進んでいます。

視力低下が理解力を下げる

高齢者の視力低下は、学習や理解、記憶といった認知機能に影響を及ぼすことが、臨床研究によって明らかになっています。奈良県立医科大学の眼科学教室が12年から県内の高齢者約3千人を対象におこなっている大規模疫学調査「藤原京アイスタディ」もその一つです。

この調査の目的は、自分で歩くことができる65歳以上の男女に健康診断を実施し、さまざまな項目の検査結果から「元気な高齢者の秘訣」を探ることです。視力などの眼科健診と、「MMSE」という認知機能検査の結果を解析し、関連を調べました。MMSEは、数値が小さくなるほど認知機能が低いと判定されます。

その結果、視力のいい人のほうが明らかに認知機能は高く保たれていました。また検査を受けた人の中には、MMSEが認知症レベルまで下がっている人も約6%含まれていて、視力の悪い人はいい人の約2倍、認知症の発症リスクが高いこともわかりました。

視力悪化と、認知機能低下の理由ですが次のように考えられます。

眼は重要な感覚器で、脳に送られる情報の80%以上は眼を通して入ってくるといわれています。視力が低下して眼からの情報が減れば、脳に送られる情報も減少します。見えにくい状態をそのままにしておけば、脳の働きはおのずと低下してしまうのです。

白内障は無痛の短時間「手術」で回復が期待できる

白内障とは、目の中でレンズの役割を果たしている水晶体が白く濁ってしまう病気です。

白内障の手術は水晶体の濁りを取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。

通常の白内障手術は目薬の麻酔だけで、痛みもなく10分程度で終了します。近視、遠視、老眼も現在の白内障手術では治せるようになっており、シニアの近視治療としても安全な手術として確立されています。

詳細は当院の 白内障サイト をご参照ください。

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