専門医コラム
2016/12/25
”クリスマス眼疾患”、鍵は腸内細菌!
年末年始はどうしても飲食過多になりがちですね。糖尿病を始めとして、眼疾患ですと糖尿病網膜症の発症、突然視力低下する網膜静脈閉塞症など、この時期に増加する疾患は、年末年始の「食」に起因する場合が多いのです。 ”クリスマス眼疾患” とも呼べる病気の時期です。
過飲食により、腸内細菌叢(腸内フローラ)を崩して生じる病気が多いと考えますが、腸内細菌については以下のコラムもご参照下さい!
風邪を引いたので抗生物質…ちょっと待った! 腸内細菌バランスが崩れて自己免疫疾患に? 果ては近視の誘導にも!
今回は日経サイエンス、2016/12/24付の記事から紹介いたします。腸内細菌、これからも重要性が次々に発見されそうです。
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私たちの腸の中には重量換算で1.5キログラムもの細菌がすんでいる。これらの腸内細菌には人体に有益な善玉菌と有害な悪玉菌があるほか、腸内の環境によってどちらにもなる日和見菌もある。善玉・悪玉も常に同じ役割を果たすわけではなく、条件次第で変化する。
■治癒率を大幅に改善
これまでの研究から、腸内細菌の構成は、年齢や生活習慣などの違いから個人差が極めて大きいことがわかってきた。さらに腸内細菌は食物の消化・吸収だけでなく、免疫系や神経系の働きとも密接に関わっているため、こうした個人差から有用な情報が得られれば、健康維持の手がかりとなる。
ただ、腸内細菌が健康に及ぼす作用は穏やかで、医薬品としては整腸剤として乳酸菌が実用化されている程度というのが、多くの医薬研究者の見方だった。
それが2013年、オランダの研究グループが、欧米で深刻な問題となっている薬剤耐性菌、再発性クロストリジウム・ディフィシルの治療で、健康な人から採取した便を生理食塩水に溶解して、抗菌剤とともに患者に投与したところ、抗菌剤単独治療よりも治療効果があることを発表してから状況が大きく変わった。抗菌剤単独の患者の治癒率は30%程度だったのに対し、こうした併用投与を行った患者の治癒率は約94%と大きな開きが出た。この結果を受け、腸内細菌に製薬企業が注目するようになった。
これまでの研究で、様々な疾患に腸内細菌が関与することがわかってきている。腸内細菌を標的にして開発する多数のベンチャー企業が米国を中心に創設され、海外の大手製薬企業も相次いで参入している。日本でも武田薬品工業が仏エンテローム・バイオサイエンス社と提携、腸内細菌を標的とした炎症性腸疾患の新薬開発に参入している。
腸内細菌創薬には大きく分けて3つの分野がある。1つは先に紹介した薬剤耐性菌などの感染症。もう1つは炎症性大腸疾患。3つめは特定の疾患ではなく、腸内細菌の構成を適正化する新薬の開発だ。創薬以外には、腸内細菌を分析して健康指導を行うパーソナル健康サービスがあり、この分野にもベンチャー企業が続々参入している。
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