専門医コラム

2017/05/10

糖尿病治療の注意点② 低血糖のこわさ!

① 薬で、弱った膵臓にムチを打ち疲弊させてしまう

② 薬でインスリンを無理やり増やすことで、体内の中性脂肪、過酸化脂質を増やしてしまう

③ 治療により低血糖を引き遅してしまう

④ 治療によって病気をつくってしまう

上記の糖尿病治療の問題点のうち、今回は③についてお伝えします。

糖尿病治療と低血糖 網膜症にとっても重要!

血糖値が高い人にとって、「低血糖」は縁が無いように思われるかもしれません。

ところが慢性的に血糖値が高く、血糖値を下げる治療をしている人ほど注意が必要です。薬やインスリン注射による治療を行っている患者さんでは、誰でも低血糖を起こしやすい危険性が高いのです。

高血糖のように、血糖が細胞内に取り込みきれない状態はもちろん問題です。しかし、ある一定量の糖が血液中を流れていないということも問題です。

血液中の糖が少ないと、身体は生命を維持するだけのエネルギーや体温、コレステロールなどをつくるブドウ糖を細胞に取り込むことが出来ないからです。

身体は常に生きていくために血糖をコントロールします。生きていくために、血糖レベルが下がりすぎると生命維持の危険を感知し脳が危険信号を出します。脳の危険サインを感知すると、身体は血糖値を上げるためにホルモンを分泌させます。

これで状態が改善されると良いのですが、十分に血糖レベルが上がらないと自覚症状を出します。例えば、脱力感や手のふるえ、めまい、動悸などです。この状態を放置すると、意識を失うこともあります。すぐに血糖値を上げるための処置が出来ればよいのですが、夜間寝ている間に低血糖を起こした場合は危険です。

患者さん本人はもちろん、周囲も気付かずにそのまま昏睡状態に陥ってしまう、死に至る可能性があります。こうなると網膜症や3大合併症どころではありません。

数値だけでは低血糖を見落とす!?

低血糖の問題を理解いただけたでしょうか。

血糖の数値的には基準値以内であっても、気を付けないといけない場合もあります。

一気にかつ大幅に血糖値が下がるような状態は、身体にとって低血糖になることと同じ意味を持ちます。急激な血糖値の低下は身体にとって大きな負担となるのです。

数値にこだわって血糖値を薬で無理やり下げることの危険を医師はよく理解しています。しかし、患者さんが「数値が全て」と思われていると、思わぬ危険を起こす可能性を理解いただきたいと思います。

私が外来診療で、患者さんに血糖値やへモグロビンA1c の値を尋ねると、「薬の飲んでいるから(インスリン注射をしているから)大丈夫。こないだ数値が高くなったから、内科で薬を増やしてもらって下がったよ。」と安心している患者さんがいかに多いことか・・・。

「薬」で「血糖数値」をコントロールしようという考えの危険性を、重ねて理解いただきたいと思います。薬はあくまで血糖をコントロールするための「補助手段」と考えてください。

本来、血糖値が高くなった食の原因を対応せずに薬に頼っていると、糖尿病網膜症をはじめ手痛いしっぺ返しを食らう可能性があります。食も、「カロリーコントロール」の考えはリスクをはらんでいることを再度強調したいと思います。

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