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先日の乳がんに関する配信について、以下のご意見をいただきました。
「乳がんガイドラインでは、乳製品に付いては摂取によりむしろ発症
とてもよく勉強されている方のようですね。貴重なご意見感謝いたします! また、私の記載表現が「言い切り」と誤解された点、お詫び申し上げます。
上記のご意見は日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインの以下の部分を指していると思います。
http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41560/
以下、一部を抜粋します。
『乳製品の摂取が乳癌の予後に影響するかどうかは結論付けられない』
『乳製品摂取と乳癌死亡リスクには関連は認めなかったが,全死亡リスクとの関連においては,最少摂取群を基準とした最多摂取群の相対リスクは,1.39(95%CI:1.02—1.90)とリスク増加を認めた。高脂肪乳製品では再発リスクは高めないが(HR:1.22,95%CI:0.91—1.65),全死亡リスクは最も多く摂取する場合で1.64(95%CI:1.24—2.17),乳癌死亡に限定しても1.49(1.00—2.24)とリスク増加を認めた。しかしながら,低脂肪乳製品に関しては全死亡リスク,乳癌死亡リスクとも摂取量との間に相関は認めなかった。』
『2014年にWorld Cancer Research Fund(WCRF)が出版した報告書(二次資料①)では,総脂肪摂取量と乳癌患者の全死亡リスクの増加の可能性,特に,飽和脂肪酸の摂取がリスクを増加する可能性があると報告している。乳製品は,飽和脂肪酸が含まれているものが多く,生活に必要なものが多い。今後は,乳製品の種類や組成などを考慮した詳細な研究が待たれる。』
様々な意見があることも事実です。このガイドラインからすると、いわゆる「玉虫色」の結論のようです。
私の知人の産婦人科医師も上記を根拠に「乳がんと乳製品の関連性は無いと結論された」と主張したいようです・・・。
以下のような新聞発表もされていますが、やはり「玉虫色」と私には思われます。
厚生労働省のホームページより以下、抜粋します。http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/b9.html
『脂肪の摂取については、動物性脂肪、特に獣肉、乳製品などの多量摂取と結腸がん、乳がん等の関係が報告されている。しかし、中には米国で行われた大規模なコホート研究のように両者の関係を認めていない報告もあるが、総合的に判断すると、動物性脂肪の多量摂取は結腸がん、乳がん等の危険因子である可能性が高い。我が国では近年、脂肪エネルギー比率が増加し、約27%となっている。年齢層によっては、30%を越えているので、全年齢を通じて25%以下に下げることが望ましい。』
動物性脂肪の観点から、乳製品と乳癌の関連を疑っているようです。
厚生労働省が主管する「がん対策推進基本計画」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html に、「食生活の欧米化によって欧米型のがん(乳がん・前立腺がん)が増えた」 という主旨の表現が何度も出てきます。
「食生活の欧米化」 がキーワードのようです。欧米人と日本人の食生活での最大の違いは乳製品摂取量と言われています。よく言われることですが、戦前と戦後の日本での食生活の変化はまさに乳製品摂取量の劇的な増加とも言えるのではないでしょうか?
疫学調査は調査対象者がどれだけ正確に回答してくれたか、質問内容が誘導的なものでなかったか、等、どこまで信頼してよいのか判断が難しい場合があります。
様々な医学報告も、全てが正しいとは言えないと思います。将来の再調査で過去の報告が否定されることも少なくないのです。そのために臨床でのある疾患に対する治療方法が180度変わることも珍しくないことは多くの臨床医師が経験していることでしょう。
眼科分野でこのような代表例として過去に行われた近視手術の間違いがあります。
世界で初めて角膜に外科手術を行い近視を治すことは1939年に日本で行われました。順天堂大学の佐藤勉教授の大きな功績です。愛国者であり、 熱血の学者でもあった佐藤教授は、日本人に多い近視を克服する道を研究されたのです。 佐藤教授は角膜前後面にメスで切開を加え、角膜中央部分を扁平化させる近視矯正術を開発しました。 しかし、後面切開が長期経過的に角膜内皮細胞の減少を起こすことが当時の医療レベルでは分かっていませんでした。現在では角膜内皮細胞を傷めると水抱性角膜症に繋がることは眼科医の常識ともなっています。この残念な歴史が、日本の眼科医が近視手術に対して保守的になった一因ともされています。
話が乳がんから脱線して恐縮です。
その時点で分からないことはやむを得ないとは言え、多くの情報を自分で解釈して正しいかどうかを自分で判断することが医師だけでなく患者さん一人一人にも大切なことであると考えます。
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