専門医コラム
2017/08/09
鉛中毒症
鉛の毒性、何を連想されるでしょうか?
鉛と言うと、「鉛筆」を連想される方が多いようです。
「鉛筆をなめていると、鉛中毒になる・・・」と信じている方も多いのではないでしょうか?
この件は、後述します。
(絵具原料には、砒素化合物、カドミウム化合物、クロム化合物、鉛化合物など、有害性を持った化学物質が含まれています。学童用として有害性物質をまったく使って無いものを除き、絵具を扱う場合には注意をして下さい。)
鉛は、頻繁に報告される意外と多い有害重金属中毒の一つです。
鉛含有塗料、内側に鉛を使った缶詰に保存された食品、陶器の入れ物に保存された食品、汚染された水を介して起こる可能性があります。
酢酸鉛は、いくつかの化粧品に含まれていることをご存知でしょうか? 鉛は皮膚からも吸収されるのです。
鉛はヘモグロビン合成を阻害します。そのため血液塗抹標本上では有核赤血球、好塩基性斑点が認められます。急性中毒では嘔吐、腹痛、ショックなどを示します。
慢性中毒では主に消化器症状、神経症状が認められます。
また、鉛のヘモグロビン合成阻害作用のために、貧血が認められることもあります。
肉眼的所見として脳水腫、大脳皮質の軟化、組織学的所見として脳回頂部における海綿状変化、血管内皮細胞腫大、星状膠細胞腫大、虚血性神経細胞死が確認される場合もあります。
子どもと鉛
特に問題となるのが子供です。
電磁波の問題でも子供の方が大人より危険である点をご紹介しました。残念ながら重金属でも同様のことが言えるのです。例えば鉛では子供は大人より、最大8倍も鉛を吸収しやすいと言われています。侵入源としては、劣化してはがれた鉛ベースの塗料のかけらやほこりが指摘されています。これが子供での主な鉛暴露の供給源なのです。
鉛はカルシウムに似ており、子供も大人も骨に蓄積され、何十年も残ります。
骨からのカルシウムは放出されます。同様に骨に蓄積した鉛も放出され、血中や他の臓器内に侵入することにつながります。
慢性の、低レベルの鉛中毒は、
高血圧リスクの増加、
腎機能低下、
に関係しています。
高いレベルの急性鉛中毒は、甲状腺、脳を含む内分泌腺に影響を与え、貧血を引き起こします。
子供では、低レベルの鉛中毒で発達障害に繋がる可能性があります。
鉛筆は大丈夫!
「子供が鉛中毒になりやすいのであれば、鉛筆をもたせておくことが危険だ・・・」と思っている方! ご安心ください。
鉛筆の生産に鉛は使われていません。鉛筆は「黒鉛」と「粘土」を混ぜて作られています。
「黒鉛」とは炭素からなる鉱物で鉛は使っていません。
「鉛」を使わないのに「鉛筆」とされる理由は? Uni Mitsubishi Pencil 社さんのホームページ(http://www.mpuni.co.jp/)によると以下のような由来があるそうです。
【いわゆる現在の鉛筆と異なり、「以前のもの」は、鉛でできた棒「尖筆」でした。この鉛の棒は現在の鉛筆のように黒い跡は残せず、文字を真っ直ぐ書くためにあらかじめ薄く線を引く目的で用いられました。この鉛の棒を"lead pencil"(鉛の筆)と呼ぶようになり、呼び方と現在の鉛筆が一緒に輸入され「鉛筆」と訳されたのではないかと言われています。】
ということで、子供さんが鉛筆をなめることは、鉛中毒に関しては大丈夫ですのでご参考まで。
治療法
先に紹介した「キレーション点滴療法」が早い改善効果が期待されます。
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