専門医コラム

2017/08/22

ヒ素中毒①

ヒ素は金属と非金属の両方の性質を持つ物質です。

この半金属性とも呼ばれるヒ素は、「ヒ素中毒」とも呼ばれるように健康に害を及ぼす可能性が高いのです。多くの人が気づかないうちに中毒になる場合があることが知られています。ヒ素は、無機ヒ素、有機ヒ素の両方の形で、自然環境に存在します。

しかし、人的ヒ素中毒として有名な事件があります。

森永ヒ素ミルク中毒事件

1955年(昭和30年)6月頃から主に西日本を中心としてヒ素の混入した森永乳業製の粉ミルクを飲用した乳幼児に多数の死者、中毒患者がでました。

食品添加物の安全性や粉ミルクの是非などの問題で、2017年現在でも消費者の権利として引き合いに出される事例となっています。また、食の安全性が問われた事件の第1号としても残念な一例とされています

森永乳業徳島工場で、原乳の乳質安定剤 (酸度安定剤)の第二リン酸ソーダが検査なしに使用されました。そのため粉ミルク製造工程で、「森永ドライミルクMF缶」にヒ素が混入。

西日本で、衰弱死や肝臓肥大を起こす乳幼児が続出したのです。世界最大級の食品公害となった事件です(死亡130名、発症12,131名)。

1955年(昭和30年)当初は奇病扱いされました。 しかし岡山大学医学部で森永乳業製の粉ミルクが原因であることを突き止められました。1955年(昭和30年)8月24日、岡山県を通じて当時の厚生省(現厚生労働省)に報告され、事件として発覚したのです。

当時は日本の高度経済成長が最優先される時代であり、国も森永側に立って収束を図りました。

森永側が原因をミルク中のヒ素化合物と認めたのは、発生から15年経過した1970年(昭和45年)の民事裁判中のことでした。その際、森永側は、第二燐酸ソーダの納入業者を信用していたので、自分たちに注意義務はないと主張(納入業者は「まさか食品に工業用の薬品を使用するとは思わなかった」と証言)。 しかし、後に国鉄仙台鉄道管理局(現・JR東日本仙台支社)が、第二燐酸ソーダ(日本軽金属製造)を蒸気機関車のボイラー洗浄剤として使っていました。しかし使用前の品質検査でヒ素を検出し、返品していた(国鉄は、蒸気機関車のボイラーの状態保持には細心の注意を払っていた)事実が明らかとなったのです。

「食品としての品質検査は必要ない」と主張していた森永の態度は厳しく指弾され、1960年代には、森永製品の不買運動にも繋がりました。西日本一帯で、このような動きは事件が一応の決着を見た昭和50年代まで続きました。

被害者の中には、現在も脳性麻痺・知的発達障碍・てんかん・脳波異常・精神疾患等の重複障害に苦しむ方もおられます(2014年現在約730名に障害症状が出ています)。 また、若い時に就職差別結婚差別を受けたり、親なきあと施設に入所している被害者、ミルクを飲ませた自責の念で長く精神的に苦しんだ被害者の親たちも多いのです。

最終的に、被害者・厚生省・森永乳業の話し合いにより、1973(昭和47)年12月23日に確認書が結ばれました。 1974年(昭和49年)4月25日に被害者の恒久的な救済を図るため財団法人ひかり協会が設立され、事業を続けています。

赤ちゃんにとって、免疫物質が多く含まれていることから母乳が最良と言われています。

しかし、母乳の分泌量が少ない、その他の理由で母乳を与えることが出来ない方も存在ます。 そこで、人工栄養として「調整粉乳」いわゆる育児用ミルクが利用されるのは多くの方がご存知でしょう。

「調整粉乳」は昭和25年に、母子愛育会が小児保健部会案として乳児の「人工栄養の方式」 を発表、  昭和26年には「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)が公布され、 厚生大臣の許可を得て「調整粉乳」に乳幼児に必要な栄養素を添加することが認められました。 これを受けてビタミンを強化したり牛乳たんぱく質の消化を良くした製品が発売されました。 この時期の調整粉乳は全脂粉乳に糖などの不足する栄養素を添加したものでした。

昭和30年代は日本の経済が急激に回復する中で、正しい栄養摂取のあり方、母乳成分の研究、 新しい技術の導入などで「調整粉乳」に加えてより母乳に近づけるため、 牛乳の成分そのものの置換を認める規格が昭和34年、(乳等省令)「特殊調節粉乳」として制定されました。 また、学校給食にも当時の牛乳不足から脱脂粉乳が使われはじめた時期でもあります。こうした人口産物の問題に関しては以下のような反省が必要と思われます。しかし、牛乳も過去に配信しているように多くの問題を抱えており、食については我々一人一人が可能な限りの注意を払う必要があります。

 

【食の注意点】

  1. 一流メーカの製品が必ずしも安全でない。
  2. 問題の影響(後遺症状)は忘れたころに発生する。
  3. 新製品には危険が潜在する可能性がある。

 

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