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ヒ素は人体に非常に有害です。飲み込んだ際の急性症状は、消化管の刺激によって、吐き気、嘔吐、下痢、激しい腹痛などが認められます。 急性中毒は、ヒ素服用後数十分~数時間で現れ、下痢、腹痛、嘔吐が起こり、さらにショック状態、全身痙攣で死に至ることもあります。
慢性中毒は、嘔吐、食欲減退、皮膚に発疹や炎症を生じ知覚障害や運動障害を起こすこともあります。慢性症状としては、剥離性の皮膚炎や過度の色素沈着、骨髄障害、末梢性神経炎、黄疸、腎不全など、多彩な症状があります。
慢性ヒ素中毒による皮膚病変として、ボーエン病(*)が有名です。 単体ヒ素及びヒ素化合物は、毒物及び劇物取締法により医薬用外毒物に指定されています。
無機ヒ素の慢性中毒は、数週間から数ヶ月以内で、貧血、神経障害、または肝臓毒性を引き起こします。
慢性ヒ素中毒は様々なタイプのガンになる可能性も指摘されています。
(*: ボーエン病は、有棘細胞癌と同様に表皮の有棘層の細胞が癌化します。しかし、その増殖は表皮の中だけに留まり(表皮内癌と呼ばれています)、真皮に及んでいない状態です。この状態であれば通常転移することはありません。)
日本人にとって縁の深い魚介類には、残念ながら高い濃度の有機ヒ素が含まれています。
穀物や家畜もまた有機ヒ素を含んでいます。
ヒ素の我々の体内への侵入経路は、吸入または皮膚からの吸収です。
無機ヒ素は、赤血球のヘモグロビンと結合し、急速に肝臓、腎臓、心臓、肺に分布します。
それらより少ない量ですが、神経系、消化管、脾臓にも到達します。
たいていの無機及び、有機ヒ素化合物は腎臓で排泄されます。
ヒ素は、細胞内でリポ酸と結合し枯渇させる作用を持ちます。
身体を動かすエネルギー物質であるアデノシン三リン酸(ATP)に直接結合してATPを不活性化してしまいます。 重要な生命活動のための化学エネルギーの産生を阻害します。
グルコースをピルビン酸又は乳酸に代謝される経路を解糖系といいます。解糖系の目的はグルコースからATP(アデノシン三リン酸)、つまりエネルギーの生成を行うことです。
ATP=アデノシンにリン酸基が三つ結合しているため、”三リン酸” と呼ばれます。
10~11段階の反応からなり、全て細胞質中で行われます。
ATPは高エネルギー結合を持った化合物であり、生体内で加水分解されるとエネルギーが生成されます。
ほとんどの生物が生命を維持するためにATPのエネルギーを利用しています。
ビタミンB1やビタミンB6、ビタミンB12などは多発神経炎に適用されます。急性、慢性問わず、BAL(一般名:ジメルカプロール)がかつてから利用されてきましたが、その有効性は確定していません。急性では胃の洗浄が行われ、血液透析なども合併症として腎不全を見る場合に適用されます。
体内半減期が短いため,血中濃度の測定はあまり有効ではありません。
ヒ素は毛髪や爪に残留します。
ヒ素の毒性は有機ヒ素より無機ヒ素のほうが強く、その中でも亜ヒ酸塩が最も強いといわれています。
経口摂取による中毒の基本的な処置方法は催嘔,胃洗浄の他,下部消化管にヒ素が確認されれば吸着剤と下剤の投与を考慮する必要があります。 しかし、その有効性は確かめられていません。
特異的な解毒薬として,キレート剤が有効であり,BALが第一選択です。 そのほか,ペニシラミンやDMSA(2,3-ジメルカプトコハク酸)も用いられます。
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