専門医コラム

2015/08/14

風邪に無駄な抗生物質を処方?減らそうと努力しても年々増加

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風邪に薬を使うかどうかは日本でもよく問題になります。

いわゆる「抗生物質」である抗菌薬がどの程度処方されているのか。米国ではこのところ増加しており、無駄も生じている可能性もありそうです。

抗生物質の処方を減らす動きがあるが

米国ジョージ E. ワレン・デパートメント・オブ・ベテランズ・アフェアーズ・メディカル・センターによる研究結果が、有力医学誌であるアナルズ・オブ・インターナル・メディシン誌で2015年7月21日に報告されました。

Jones BE et al. Variation in Outpatient Antibiotic Prescribing for Acute Respiratory Infections in the Veteran Population: A Cross-sectional Study.

Ann Intern Med. 2015 Jul 21;163(2):73-80.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26192562

風邪は、専門的に見ると、主にウイルスを原因とした気道の感染症。このたび研究グループは、風邪や副鼻腔炎などを含む「急性呼吸器感染症(ARI)」と薬との関係について調べました。

研究グループによると、抗生物質の処方を減らす動きはありながらも、処方を決める要因の情報は不足しているとのこと。

研究グループは、2005年から2012年の間に、急性呼吸器感染症と診断を受けた人のうち細菌の感染率が低く、主にウイルスを原因とする症状の軽い人を対象として、どのような薬が処方されていたのか傾向を調査しました。

研究では、抗生物質の使用が妥当と考えられるような感染症にかかった人や合併症のある人については除外されました。

抗生物質処方は減っていない

抗生物質を処方された人の割合を調べたところ、結果として2005年67.5%から2012年において69.2%となっておりわずかながら増えていました。マクロライド系の抗生物質の処方は特に増えており36.8%から47.0%と増加していました。

マクロライド系抗生物質は、副作用も少なく幅広い細菌に使用できることから使用が広まっているが、最近では子どもへ多く処方され過ぎることに心配の声も上がっています。

New Study in Mice from NYU Langone Medical Center Finds Multiple, Long-Lasting Effects after Several Courses of Antibiotics Commonly Used in Children. NYU Langone Medical Center July 1, 2015

http://nyulangone.org/press-releases/repeated-courses-of-antibiotics-may-profoundly-alter-childrens-development

抗生物質の処方は「副鼻腔炎」で86%、「気管支炎」85%と最も高く、発熱や年齢、合併症などによる処方率の差はほとんどありませんでした。

医療提供者の主観で差

医者や薬剤師などの処方する人によって抗生物質を処方する割合も大きく異なっていました。

抗生物質の処方の程度で医療提供者をグループ分けしたときに、最も多く処方している全体の1割のグループでは、急性呼吸器感染症の人の95%以上に抗生物質を処方していました。逆に、最も少なく処方している全体の1割のグループでは、40%以下にとどまりました。

症状や状況に応じて処方されているわけではなく、医療提供者ごとの主観によるところが大きいと考えられます。

いわゆる抗生物質は細菌には有効ですが、ウイルスには効果を持ちません。 『風邪には抗生物質は効かない』のです。むしろ、腸内フローラを破壊する事で免疫力低下、すなわち 『治る力』を低下させる可能性が高くなると考えられます。

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