専門医コラム

2015/11/04

サクセスフル•エイジング〜その②

いちょう並木

運動の影響 2:最大酸素摂取量の向上

最大酸素摂取量とは、私たちが1分間で体内に取り込むことのできる酸素の最大量のことです。最大酸素摂取量が大きいほど、全身持久力としての体力がすぐれていると評価されます。

誰でも老化によって最大酸素摂取量が減少するものですが、トレーニングを受けた高齢者の最大酸素摂取量は、座りがちな生活を送っている若年者の最大酸素摂取量と同程度であることが報告されています。老化に伴い、10年間あたり最大酸素摂取量は5~10%減少しますが、これを定期的な運動で抑えることができるという報告もあります。

またジョギング、サイクリングや水泳など、高い持久力が必要とされる強度の運動ができる高齢者がトレーニングを受けた場合、最大酸素摂取量は約15%向上しました。一方、最大酸素摂取量が低かった高齢者でも、多くの場合、トレーニング後には最大酸素摂取量が改善したと報告されています。

ただし、子どものころにトレーニングを始めた人と、40歳以降に運動を始めた人とで、最大酸素摂取量に違いが出るかどうかは、まだ報告がなく不明です。それでも一部の高齢者はサクセスフル・エイジングを獲得し、最大酸素摂取量を改善することで、若いころに達成した能力に近づくことができるのです。

高齢者人口の増加に伴い、中高年齢層のアスリートの数も増加しています。中高年齢層が過酷な運動をすることを個人的にはお勧めしませんが、高齢アスリートの中の能力に驚かされることもあります。実際、最大運動能力の獲得年齢が高齢化しているのです。例えば、ニューヨークマラソンの調査では、65歳以上の男性、45歳以上の女性ランナーは、過去30年間において、著明に記録が速くなっています

今後、「マラソンなどのスポーツが運動能力にどう関係するか」という観点での研究が、老化プロセスの再評価につながっていくはずです。

運動の影響 3:骨密度の改善

運動を通じて骨に力学的負荷をかけると、骨の形成が促進されます。負荷の大きさや速さ、量が骨形成の進み方に影響するといい、負荷がかかった部分のみの骨密度が改善するとも考えられています。ただし、骨に負荷がかかることで転倒や骨折のリスクも懸念されます。

骨密度については、食の重要性を過去のコラムでもお伝えしていますのでご参照下さい。(⇒ 牛乳と骨粗鬆症

運動の影響 4:テロメア

染色体の末端にある「テロメア」と呼ばれる部分は、染色体を保護する部分です。テロメアは細胞の分裂ごとに短くなり、一定の長さ以下になると細胞分裂が止まります。そのためテロメアは「分裂時計」とも言われ、テロメアが短いと寿命が短いと考えられています

最近の研究で、身体活動はテロメアの長さを維持するのに役立つ可能性があることが分かってきました。運動している人のテロメアは、運動していない人のテロメアより、平均200ヌクレオチド(DNAやRNAの構成単位)も長く、約10年(10歳)も若いことが証明されました。

運動の影響 5:認知機能の改善

運動は、高齢者の認知機能を向上させることが報告されています。例えば、60分の有酸素運動を週3回、6週間続けることで、特定の認知機能の改善が認められました。

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こうした研究報告から、見た目だけではない、筋肉や運動の重要性を理解いただけたことと思います。

過度な負荷はお勧めしませんが、ラジオ体操で良いのです。今日から体を動かし始めてみてください! まずはご自身で経験されるのが何よりです。すぐに効果が出なくても、継続することが成功の鍵です。特別な運動を、お金をかけて始める必要はありません。まず、一歩外に出る散歩から始めませんか? サクセスフル・エイジング獲得は、多くの眼病の予防にも繋がる筈です!

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