専門医コラム

2021/06/06

男性更年期症候群! 目と関連あり!?

更年期と言うと「女性」の問題と捉えられがちです。とはいえ、最近では、「男性」にも更年期障害が起こっていることがいろいろと取り上げられるようになってきましたね。

40歳以降で身体的、心理的、性的な不調が男性性腺機能の低下によってもたらされる症状を、通称で男性更年期症候群、正式には「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と言います。

LOH症候群は、うつ、性機能の低下、認知機能の低下、骨粗鬆症、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性の悪化 (血糖値の上昇)、善玉コレステロール (HD L) の低下、中性脂肪と悪玉コレステロール (LDL) の上昇につながり、メタボリック症候群のリスクファクターになります。さらには心血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患のリスクを高めます。

診断にはチェックテストなどで中等症以上に該当するかを確認。その後、血液検査でもっとも働きが強いとされている遊離 テストステロン値を測定し、8.5pg/mL未満であるとLOH症候群と診断されます。

 

男性更年期のセルフチェックをしてみましょう。

ここまで読ん でいただいた男性の方、何となく気になりますよね(笑)。

慌てて病院に行く前に自分で男性更年期・LOH症候群かご自分でチェックなさってください。

原因

 

加齢とストレスにともなう男性ホルモンの急激な分泌低下が原因と考えられますから、「ストレスの原因を解決すること。」や「ストレスを癒したり、健康的に発散す ること。」が解決の根本になるでしょう。
そして、「ホルモン分泌が活発となるように、食生活や運動など日常の生活習慣を改善する」ことが大切な養生訓になるでしょう。

ところが、精神的にも微妙な状態となっている場合が少なくなく、解っていても落ち込んでいる時には「最初の一歩」 が踏み出せないものです。

 

その場合、不足分の男性ホルモンを補充する方法もあります。

更年期から初老期のホルモン不足は、女性だけの出来事ではありません。「男性にも更年期がある」という事実は 、今や世界的なコンセンサスです。

 

 

「テストステロン」

代表的な男性ホルモンの一つである「テストステロン」は筋肉の量と強度を保つのに必要であり、造血作用を持ち、男性の性行動や性機能に重要な役割を有します。

20代からゆるやかに減り始め、40代で急激に分泌が減少することがわかっていますが、低下することで明らかに性機能が落ちます。

そのほかにも、「疲れやすく、疲労も抜けづらい」「精神的な落ち込み、うつ症状、イライラ感」「集中力、意欲の低下」などの症状が出てきます。テストステロンには抗肥満作用もあるため、低下にともなって太りやすくなり、高血圧や高脂血症、ひいては糖尿病のリスクま で上がることがわかっています。

「中年太り」との関係も強そうです。

テストステロン値が高いと男らしさが強く、攻撃的であると思われがち。しかし、男らしさより社会的ホルモンと言われており、テストステロン値が高いほうが人との交渉能力や決断力が高いという研究データも存在します。

つまり、テストステロン値が高まると精神的にも良い影響が現れます。リーダーシップが高まり、決断力を後押ししてくれるなどの効果です。

アメリカでの実験で、女性に74名の男性の写真を見せて好みの男性を選別してもらいました。その結果を見ると、選ばれた男性は免疫力が高く、テストステロン値が高い人が多かったのです。

生き生きとした姿を見せ、覚悟を持って的確な意思決定ができる。同性、異性を問わずこうした人物であれば、皆に重宝される人材でしょう。

テストステロンの働きを維持し続けることは、プライベートあるいはビジネスシーンにかかわらず、人から求められるキーパーソンであるためにとても重要な要素なのです。

 

治療法

治療は漢方薬やテストステロン補充療法(TRT)による治療と生活改善を並行して行っていきます。
TRTの方法としては、経口剤、注射剤、皮膚吸収剤がありますが、わが国では注射剤エナント酸テストステロンのみが保険適応となっています。TRTにより、筋肉量、筋力、骨密度、インスリン感受性、気分性欲、健康感の改善が認められます。また勃起不全の方に対する治療にお いてTRT はPDE5阻害薬の効果を増強することが報告されています。

テストステロンの補充に対して、テストステロンの分泌力を回復することに漢方薬が有効な場合があります。当方では、こうした患者様にはまずは漢方薬の処方をさせていただいております。

 

漢方薬処方の種類

1.精神・肉体に衰えを感じている場合

LOH症候群は、精神や肉体に衰えを感じるような症状が現れることが多くあります。その場合は、症状・体質に合わせて次のような漢方薬を選択します。

【八味地黄丸(はちみじおうがん)】
八味地黄丸は、地黄(じおう)、沢瀉(たくしゃ)、桂皮(けいひ)、附子(ぶし)など8種類の生薬を配合しています。漢方でいう「腎」の働きを良くする漢方薬で、体力が低く疲れやすい方に向いています。

「腎」は膀胱や生殖器の働きも含まれているため、頻尿など尿トラブルの症状緩和に効果的です。また体を温めることから、中年以降に起こりやすい手足の冷えの改善にも有効とされています。

【六味丸(ろくみがん)】
六味丸は、八味地黄丸から「桂皮」と「附子」を省いた6種類の生薬を配合した漢方薬です。体力が低く疲れやすい方、頻尿などの尿トラブルのある方に向いています。冷やす作用があるため、ほてりの改善に効果があるといわれています。

【牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)】
牛車腎気丸は、八味地黄丸の処方に「牛膝(ごしつ)」と「車前子(しゃぜんし)」を加えた漢方薬です。体力が低く、疲れやすさ、足腰のしびれや重だるさ、慢性的な腰痛などの症状がある方に向いています。むくみ、冷え、頻尿などの更年期症状に処方されるケースが多いようです。

 

2.疲労感が目立つ場合

疲労感のある症状には、次のような漢方薬が処方されます。

【補中益気湯(ホチュウエッキトウ)】
補中益気湯は体力虚弱で疲労感や意欲の低下、食欲不振、だるさなどの症状がある方に処方されることの多い漢方薬です。胃腸の働きを高めて虚弱を回復させる効果が期待できます。

【加味帰脾湯(かみきひとう)】
「加味帰脾湯」は、体力が低く、心身に疲れがあり、不眠、眠りが浅いなどの睡眠障害がある方に処方されます。精神安定の効果も期待できるため、精神症状がある場合にも効果があるようです。

【柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)】
体力があり、精神不安や不眠などを伴う疲労感のある方に処方されます。神経過敏、動機、無気力、うつ傾向にある場合にも効果が高いようで、ストレスや過労から引き起こされる症状緩和に向いています。

 

更年期障害対応漢方薬は眼科疾患にも有効

今回、男性の更年期障害について取り上げました。治療法で紹介した漢方薬ですが、実は私が眼科疾患の患者さんにしばしば処方しております。

 

具体的には上記で紹介した漢方薬を、白内障、緑内障、眼科手術前後のケア、などの眼科疾患に対してしばしば処方させていただいております。

 

「男性の更年期障害と、緑内障の治療を同じ薬で行うのですか?」と疑問を持ってもらえると幸いです(笑)。

 

東洋医学的治療では、このようなことは珍しくありません。

「眼科疾患は身体の病気の先行指標」と捉えられているからです。

 

反対に言うと、「身体の変調が目の病気となって現れる」のです。

 

さらには眼科疾患の治療に使われる漢方薬は、「何が眼病を起こした原因か」という、「疾患の本質」に対しての治療目的での処方となります。

眼科的な治療だけではなく、将来的な身体に生じる病気の予防としても漢方薬を活用させていただいております。

眼疾患に限らず、ご自身の「免疫力」を高めてあげることが出来れば、 ほぼすべての後天性疾患治療に有効です。

 

点眼薬を続けていても症状が改善しない患者さんは大勢おられます。

このような場合、「更年期症状」に伴う可能性は、男女のどちらにも漢方薬治療が有効と考えます。

 

「もしかして自分の診断を受けた疾患が、漢方薬で治るのかもしれない。」

と思われた方は、是非一度ご相談ください。

 

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おぐりクリニック (滋賀、長浜イオン西隣)

 

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