専門医コラム
2015/05/23
子どもの健康、環境が影響? 環境省が生活習慣など調査
化学物質や生活習慣などの環境要因が子どもの成長や病気に与える影響を追跡する調査を環境省が進めています。全国の親子10万組が参加する世界でも珍しい大規模な疫学研究で、約20年続く事業でアレルギー疾患などの対策につながればと期待されています。
環境省が実施しているのは「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)です。エコチルはエコロジー(環境)とチルドレン(子ども)を組み合わせた造語で、11年から始まりました。27年まで親子を追跡し、32年までデータを解析する計画。全国15地域で親子を募集し、今年3月までに目標を上回る約10万3000組が集まっています。
昨年11月までの分析で暫定的な内容ですが、エコチル調査による成果も出てきています。その1つが、アレルギーを引き起こす可能性がある物質を含む食品の食べ始めの時期です。生後9カ月より前の子どもに対し、46%の母親が鶏卵を含む食品を食べさせていませんでした。この割合は牛乳・乳製品では54%に達し、コメは同じ時期に99%がすでに食べさせているのと対照的です。
私は牛乳•乳製品を食べさせない事には大賛成です! (こちらのコラムをご参照下さい ⇒ ./?mnu=0211&IDX=264 )
海外からは、離乳食の開始時期を遅らせても食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防には役立たないという報告が相次いでいます。国立成育医療研究センターの大矢幸弘アレルギー科医長は「卵やナッツなどの食品の食べ始める時期を遅らせたほうがアレルギーが減るのか、それとも増えるのか、あと2、3年するとエコチル調査から分かるようになるだろう」と述べています。
母親の喫煙習慣についても妊娠初期に5%が「現在も吸っている」と回答 •••意外に思うのですが、妊娠しても煙草をやめられない(!?)方がいると言う事です。
妊娠中は禁煙しても産後に再び吸い始めるケースもあり、1歳半児の母親の喫煙率は8%でした。年齢別にみると、特に25歳未満の若い妊婦が再び吸う割合が高く、20%となっています。
調査に関わる山梨大学の山縣然太朗教授は「妊娠初期でたばこを吸う母親から生まれた子どもは肥満のリスクが高くなる」と警告。胎盤の循環機能の不全が低栄養状態を招き、それが出生後の肥満につながると説明しています。当然と言えば当然に思われますね。
喫煙の有無で比べると5歳児では肥満リスクが4倍に、10歳児でも3倍の開きがあるという報告もあります。こうした分析はこれまでの別の研究から得られた数字ですが、エコチル調査でさらに詳しく分析できると予想されます。
当院のアレルギー科では、ダイオキシンや水銀、パラジウムなのど重金属や内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)による体内汚染を問題視して、体内から毒物を排出するデトックス治療を行っています。今後のさまざまな研究の積み重ねでこれら物質の、発育、性分化、精神神経、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系などと具体的にどのような影響と相関が高いのかを統計的に明らかにされることを期待しています。
こうした調査が行われるようになった背景には、子どもの間でぜんそくやアトピー性皮膚炎などが増えている点があります。これらの病気は生活環境中の物質や食事、運動、遺伝など多様な要因が関係しあって発症すると考えられており、11年の福島第1原発事故による放射性物質による影響も懸念材料に加わっています。
環境省はエコチル調査の結果によっては、化学物質規制の審査基準や水質・土壌などの環境基準を見直す必要も出てくると考えていますが、コラムに出したように調査会社による伊吹山や琵琶湖での水銀汚染も新聞記事に掲載されており(./?mnu=0211&IDX=191)早期に基準見直しは必要でしょう。
日本は疫学分野が弱いといわれてきました。こうした研究が盛んになる事は良い事です。しかし研究結果が20年後に出るのを待っていては子どもも成人してしまい ”手遅れ” ともなりかねません。ご自身で納得出来れば、このような重金属による体内汚染問題は研究成果が出る前でも一人一人取り組んでいただく事が子どもさんの健康や、ご家族の健康にとって大切だと考えます。