専門医コラム
2015/08/02
「運動中に水をたくさん飲む」の落とし穴、低ナトリウム血症で時には命の危険も
「運動中に水をたくさん飲む」の落とし穴
水やスポーツドリンクによる水分の過剰摂取によって、「運動関連低ナトリウム血症(EAH)」と呼ばれる状態に陥る可能性があります。
米国バージニア大学ヘルス・システムのマイケル・ロスナー医師が、カナダ・スポーツ医学会の発行するクリニカル・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン誌の2015年7月号で「運動中の水分の過剰摂取に関わる死亡を防ぐ:2015年合意ガイドライン」のタイトルで報告しました。
Experts: Overhydration potentially deadly for athletes
Rosner MH.Preventing Deaths Due to Exercise-Associated Hyponatremia: The 2015 Consensus Guidelines.Clin J Sport Med. 2015;25:301-2.
運動関連低ナトリウム血症の危険性
脱水症状のリスクについてはよく知られていますが、アスリートが運動中に水分を取り過ぎることで、運動関連低ナトリウム血症と呼ばれる状態になるのはあまり知られていないようです。水分過剰も問題となるのです。
EAH(Exercise-Associated Hyponatremia)は、身体の塩分レベルが低くなりすぎて、深刻な神経の問題を引き起こす状態を言い、場合によっては命に関わります。
かつては、マラソンやトライアスロンといった耐久スポーツの参加者で起きたものですが、現在はより幅広い種類のスポーツでも起きています。研究グループのところでも1981年以来、少なくとも14件のEAHによる死亡を記録しています。2014年の夏にはフットボールをしていた若いアスリートが2人死亡しました。
EAHを防ぐ鍵
「一般的に水をたくさん飲むとパフォーマンスが向上し、脱水を防ぐことができるという間違った考えによって起こっている」と研究グループは注意を促しています。軽いレベルの脱水は、パフォーマンスを損なうことはないと説明しています。
喉の渇きを目安にして、水分を取るようにすると良いのです。喉が渇いている時に水を飲む場合は低ナトリウムにはなりません。そして深刻な脱水症状を起こすこともありません。
スポーツドリンクも同じ
スポーツドリンクを飲む場合にも、水と同じような注意が必要です。スポーツドリンクには塩分が含まれているとはいえ、水には違いないのです。
EAHの最初の症状は、思考がぼんやりとする、吐き気、頭痛などがあります。深刻な場合には、発作、精神錯乱、昏睡状態になることもあります。コーチや親は、運動中の子どもがEAHかも知れないと思う場合には、水を飲むのを止めるよう注意して下さい。
夏の甲子園、高校野球が始まりますが、猛暑の折、皆さんもどうぞご注意下さい! 身体に過剰な負担がかかると、眼の様々な病気が進行する事も知られています。