専門医コラム
2015/08/13
風邪を引いたので抗生物質…ちょっと待った! 腸内細菌バランスが崩れて自己免疫疾患に? 果ては近視の誘導にも!
子どもが風邪などの治療のためにいわゆる抗生物質を飲む習慣があると、飲まない子どもに比べて「若年性突発性関節炎」という関節の病気になりやすくなると報告されました。
腸内フローラの破壊に繋がる可能性です。
おなかの良い菌も死んでしまう
米ペンシルベニア大学医学大学院を中心とした研究グループが、小児科学の専門誌ペディアトリクス誌2015年8月号で報告しました。
Horton DB et al. Antibiotic Exposure and Juvenile Idiopathic Arthritis: A Case-Control Study. Pediatrics. 2015; 136: e333-43.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26195533
風邪を引いて病院へ行き、病原菌を殺す薬「抗生物質」を処方された経験がある人は多いでしょう。実は日本は莫大な "抗生物質消費国" なのです。私は自分では抗生物質は飲まないようにしており、患者さんへの処方も手術後の一時期か、ごく限定しての処方を心がけています。
抗生物質は病原性の細菌は殺せても病原ウイルスには無効です。一般的に抗生物質と呼ばれている薬は、厳密には抗菌薬である場合がほとんどです。風邪の原因はほとんどがウイルスであるので、風邪に抗生物質を処方するかどうかはしばしば議論の対象となります。
頻繁に風邪を引いてそのたびに抗生物質を飲むと、おなかの中の良い菌まで死んでしまい、腸内細菌のバランスが崩れ、結果的に免疫力が落ち、体の抵抗力が弱くなるという報告が複数なあります。
原因不明の病気に焦点
抵抗力が弱くなるだけではなく、免疫の仕組みが異常になり、自分の体の一部を攻撃してしまう「自己免疫疾患」になるケースもあると最近分かってきました。
子どもに発症する自己免疫疾患の1つに「若年性突発性関節炎」という慢性関節炎があります。以前は若年性関節リウマチとも呼ばれていた病気です。
この病気は原因不明ですが、研究グループは、抗生物質を飲むことが発症に関わっているのではないかという仮説を立て、検証を行いました。
検証は、英国の医療記録データを用いて行われました。若年性突発性関節炎と診断された子どもと、年齢、性別が一致した自己免疫疾患でない子どもを対象に、抗生物質を飲んだ回数を調べて比較しました。そのデータを統計学的に解析し、抗生物質の服用と若年性突発性関節炎とに関連性があるかどうかを評価しました。
多く飲むほどリスク高く
その結果、抗生物質の服用と若年性突発性関節炎の発症に関連が確認されました。
子どもが抗生物質を飲んだ経験があった場合、若年性突発性関節炎の発症リスクは2.1倍ほど高くなっていたのです。
このとき抗生物質を飲んだ回数が多いほど、リスクは高くなっていました。5回以上抗生物質を飲んだ経験があった場合には、発症リスクは3倍ほど高くなっていました。
また、若年性突発性関節炎と診断されるまでの1年以内に抗生物質を飲んでいた子どもが多かったとのことです。
細菌を殺す抗生物質ではなく、抗真菌薬、抗ウイルス薬を飲んだ経験と、若年性突発性関節炎の発症との間に関連性は見られませんでした。
風邪で飲まない方が無難?
さらに、上気道感染症、いわゆる「風邪」の治療で抗生物質を飲んだ子どもは、飲まないで風邪を治した子どもに比べて若年性突発性関節炎になりやすい傾向も認められました。
今回の検証により、抗生物質を飲むと若年性突発性関節炎が発症する可能性が示唆されました。研究グループは、子どもの腸内細菌バランスが崩れるためと推測しています。
風邪や簡単な疾患に抗生物質に頼り過ぎない注意が必要で、特にお子さんへの投与は私はお勧めしません。
免疫力低下と近視の関連
上記の報告は決して若年性突発性関節炎だけの問題ではないはずです。
近視は目の巨人症(眼球過剰成長)です。何故、眼球が巨大化するのか、免疫力低下を成長期に起こしてしまう事が正常は眼球発育阻害を生じると考える事が自然かと思います。拙著、”子ども視力回復トレーニング” でもこのことをご紹介しています。
『子ども視力回復トレーニング 』著者小栗章弘
単行本
出版社: 経済界 (2015/5/22)
ISBN-10: 4766785940
ISBN-13: 978-4766785944
関節炎なのか、眼球過剰成長なのか、あるいは両方合併するのか、今後の研究が必要ですが、関係ないとは言えないでしょう。
『不用な薬は出来るだけ内服しない』というのが私の治療方針です。
痛み、かゆみ、発熱 等、カラダが辛い時に短期に不快感を取る目的で、西洋医学あるいはその薬は有効ですが、西洋医学では原因を治さないため必ず病気は再発します。内服薬で不快感を改善したら、出来るだけ早く西洋薬の内服は中止すべきと患者さんにお伝えしているのは不用な病気の発症を起こさないためです。
また、薬を減らす事で日本の医療費削減にも貢献出来ると考えます!