専門医コラム
2015/11/03
サクセスフル•エイジング〜筋肉を使えば若く、健康に、そして認知症も予防できる
見た目だけでなく健康維持に筋肉は重要です。運動は筋肉維持のためだけでなく、老化に対するさまざまな予防効果につながります!
サクセスフル・エイジングの達成には定期的な運動が不可欠!
「サクセスフル・エイジング」という言葉をご存知でしょうか? 年齢とともに老いてくいくことを自覚し、受け入れながら社会生活にうまく適応して、豊かな老後を迎えることとして使われるようになってきている言葉です。つまり身体的・精神的健康と機能的自立を維持した年齢の重ね方です。慢性疾患にかからず、さまざまな状況の変化に適応する柔軟性を保ち、できないことに直面しても、何とか乗り越えられるような老化のしかたということも意味します。
サクセスフル・エイジングは個人差が大きいといわれていますが、その達成には必ず、定期的な運動が必要です。
運動の予防効果
定期的な身体活動は、心血管疾患、脳卒中、高血圧、2型糖尿病、骨粗しょう症、肥満、大腸がん、乳がん、不安や抑うつのリスクを明らかに軽減することが示されています。さらに、転倒による負傷のリスクも低減します。
医師が参考にする診療ガイドラインでは、うつ病、不安障害、認知症、慢性的な痛み、うっ血性心不全、脳卒中、静脈血栓塞栓症、腰痛、便秘などの予防における運動の役割を明らかにしています。さらに、身体活動が認知障害を阻止または遅らせ、睡眠を改善することが、複数の研究で証明されています。
なぜ運動をすると老化に良い影響があるのか、医学研究報告を紹介します。
MATURITAS「Exercise and longevity」
運動の影響 1:心臓や血管への効果
私たちの動脈は、内膜、中膜、外膜の3層構造からなっていて、内膜は一層の血管内皮細胞で覆われ、血液が循環する空洞(内腔)と接しています。この血管内皮細胞の機能が低下すると、動脈硬化が起こりやすくなります。しかし運動することで、血管内皮機能が改善され、動脈硬化を予防できることが分かってきました。動脈硬化が起ると、血液を遠くまで送る為に心臓が強い力で血液を押し出さないと、手足や脳まで血液が届かなくなります。これが高血圧の状態です。動脈硬化を起こさなければ、心臓は血圧を上げる必要がないのです。
また運動により、中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールが減少し、HDL(善玉)コレステロールが増加します。さらに血圧や体脂肪量が下がり、インスリン抵抗性が改善し、心血管疾患の危険因子を減らせます。血栓(血管の中にできる血の塊)の形成も防げます。適度な運動は脳血栓や心筋梗塞などの予防にも効果が期待できます。