専門医コラム

2016/07/02

レーシック手術が激減② 長期安全性

レーシックが減ること自体は患者さんが希望しないのであれば問題はないのですが、反対に使い捨てコンタクトレンズ販売数が日本では増加し続けており、それに伴う障害も増加し続けているのです。多くの場合はレーシック等の近視手術で視力を回復して、コンタクトレンズ(以下コンタクト)を使わなければ防げる問題です。

コマーシャルなどのイメージ誘導で「コンタクトは安全」と、間違ったイメージをコンタクト使用者が抱いていることに問題があると考えます。

以下、日本眼科学会のホームページから引用します。

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1991年に、使い捨てソフトコンタクトレンズが発売されてから、コンタクトレンズ(CL)装用者が急増しました。CL装用人口は全国で1,500万~1,800万人ともいわれ、国民の10人に1人がCLを装用していると推測されています(図1)。それに伴いCLによる眼障害が急増し、CL装用者の10人に1人に眼障害が生じていると推測されています。その背景にはケア方法が簡便になったことやCL量販店の安売り販売、そしてインターネット販売の普及などがあります。

CL眼障害の原因は装用者側と処方する医師側、そして販売者側に問題があると考えられます。装用者はCLが高度管理医療機器である認識に乏しいために、正しい使用法、レンズケアそして定期検査を怠っていることなどがあります。また、処方する医師そして販売者が同様の正しい方法を指示していないことがあります。

処方する医師は眼科知識を備えた眼科専門医による処方、そして販売者側はCL販売営業管理者による適切な販売が必要です。また、医師の処方なしでCLを販売していることが少なくありません。

図1.コンタクトレンズ装用者の急増

コンタクト装用者の急増

ディスポ系ソフトコンタクトレンズ(SCL):

毎日使い捨てSCL、1週間連続装用SCL、2週間交換SCL、定期交換SCL

 

(全文はコチラ → http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_contact.jsp

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10人に1人がコンタクトで障害を起こしているというのが現実で、これはレーシックで発生する問題に比較して桁違いに高い割合です。

多くが匿名投稿ですが、レーシックについては否定的な "体験" がネット上であふれているのに、それより遥かに多く生じているはずのコンタクト障害は何故かネット上で体験談が殆ど見かけないのは何故でしょうか

コンタクト障害の後遺症でお困りの患者さんが少なくないことも眼科専門医には知られています。角膜感染症の中でも細菌性角膜炎やアカントアメーバ角膜炎など、失明につながる重篤な感染症はソフトコンタクトレンズ使用者に多いことはよく知られています。各種角膜感染症については日本眼科学会のホームページを参照ください。(角膜感染症 → http://www.nichigan.or.jp/public/disease/kakumaku_kansen.jsp

100%安全な治療は薬、手術、コンタクトでもありえない

医学的治療(投薬、手術、リハビリテーション等)の副作用、合併症については、一件も生じないことが理想です。いくら確率が低いとはいえ、ある患者さんに副作用が生じてしまっては、その患者さんにとっては100%の問題となるからです。

しかし、現実には100%安全な薬や手術は存在しません。もちろんコンタクトも冷静に考えていただくと、リスクが高いことは理解いただけると考えます。昼間、空気に触れて呼吸している角膜に、「ビニール」を貼り付けるわけですので、無理のない範囲で使用するべきです。そのためにコンタクトをよく理解している定期的な眼科専門医による検診が必須です。

ある治療法を選択する際に、仮に合併症が生じた場合でも、対処方法が確立されているかを含め、改善効果と副作用と天稟にかけて患者さんに選択を行っていただいているのが現実です。

コンタクトという「異物を一時的に角膜に貼り付ける」治療とレーシックという「手術」を完全に同等に扱うことは難しいですが、どちらも効果と副作用を正しく理解した上で、患者さん一人一人どの選択がご自身にとって最善かお選びいただくことが理想です。

近視矯正手術の長期的安全性・矯正後視力・再度近視のリスク

実際のレーシックの安全性について、日本医事新報の記事をご紹介します。( http://www.jmedj.co.jp/article/detail.php?article_id=15365 )

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北里大学医学部眼科学講座  五十嵐章史

北里大学医学部眼科学講座准教授  神谷和孝

【Q】近視矯正手術の長期的な安全性,矯正された視力の維持,再度近視になるリスクについて.

【A】LASIKやphakic IOLは長期的な安全性が高く,矯正視力が低下することはほとんどない.強度近視眼にLASIKを行うと軽度の再近視化を生じることがあるが,術前診断と適応選択を誤らなければ長期的な臨床経過は良好である

(1)LASIK(レーシック)

LASIK(レーシック)は,最初の報告から約20年近くが経過しており,屈折矯正手術としての標準術式となっている.手術方法としては,点眼麻酔下に角膜表層に薄いフラップを作成した後,そのフラップを翻転し,露出した角膜実質へエキシマレーザーを照射した後に,フラップを元に戻す.

LASIKにおける10年以上の長期成績からは,いずれも矯正視力が低下する例はほとんどなく,重篤な合併症も少ないことから,長期的にも安全性の高い術式と考えられている.その一方で長期的な有効性の観点から,特に強度近視眼において“リグレッション”と呼ばれる術後屈折の戻り(再近視化)が生じることが明らかになっている.ただし,約−0.12~−0.25D/年と報告されており,その程度としてはわずかである.

発症機序としては,創傷治癒反応に伴う角膜上皮過形成や実質再合成,薄くなった角膜全体の前方偏位,眼軸長の伸展などが考えられている.通常,近視度数が大きいほどリグレッションを強く認めることが多く,現在のLASIKでは軽度~中等度近視が主な適応となっている.

数年前,某近視クリニックにてLASIK後の集団感染症が報道され,その安全性が危惧されたが,実際にLASIK後の感染症は約0.035%と報告されており,非常に稀であることは理解しておきたい.昨今の手術器具や医療機器の改良も目覚ましく,術前診断と適応選択を誤らなければ,長期的な観点からも優れた術式と考えられる.

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