専門医コラム

2016/12/29

冬、網膜静脈閉塞症④

症状が落ち着いた後の合併症の予防と治療

上方の太い黒矢印:新生血管。その左側では出血が始まっていて、どす黒く見えます。
小さい黒矢印:黄斑が傷んでいます。
白矢印:静脈の分枝の詰まった部分。

新生血管が発生した網膜

網膜静脈閉塞症では、発症後3カ月から1年以上も経ち症状が落ち着いた慢性期になってからも、次のような合併症が起きることがあります。網膜静脈閉塞症は片眼に発症することが多いので、普段は両眼で見ているため症状があまり気にならないこともありますが、これらの合併症を防ぐために継続的な管理が欠かせません。

硝子体出血

閉塞部位から末梢側の毛細血管が破綻し消失すると、そこは無血管野〈むけっかんや〉(血管の存在しない部分)となります。無血管野の細胞は、血管の新生を促すVEGFを放出し、それによって新生血管(本来は存在しない新しくできた血管)が発生します。

新生血管は、硝子体を足掛かりにして伸びてきてます。新生血管の血管壁は、大変もろくて破れやすいために、容易に出血が起こります。新生血管からの出血は硝子体内に広がり、硝子体が濁って物が見えなくなります。

新生血管は、網膜無血管野が広いほど発生頻度が高くなります。

(1) 虹彩に発生した新生血

管が隅角を癒着し、房

水の流出が阻害される

(2) 眼圧が上昇し、視神

経乳頭が圧迫される

血管新生緑内障〈りょくないしょう〉

緑内障は、眼球内を満している房水〈ぼうすい〉の産生と流出のバランスが崩れ、房水が増え過ぎて眼圧が高くなり、視神経乳頭が圧迫され、視野が狭くなったり、ときに失明することもある病気です。

VEGFにより発生する新生血管は、網膜や硝子体だけでなく、眼球の前方の組織にも伸びてきます。そうした新生血管により、房水の流出口である隅角がくっつき合って房水が蓄積し、眼圧が上昇するのが血管新生緑内障です。これは、高度で広範な無血管野を生じる中心静脈の閉塞で発生します。

通常より治療が難しいタイプの緑内障ですが、近年は抗VEGF薬による血管新生の抑制と手術の併用療法など新しい試みにより、この合併症による失明も少しずつ減ってきています。

網膜剥離

網膜が眼底から剥がれて、その部分の視覚が障害されるのが網膜剥離です。

硝子体へと伸びた新生血管は、網膜と硝子体に癒着〈ゆちゃく〉しています。そして、無血管野の網膜は通常よりも薄く、もろくなっています。そこに、硝子体の収縮が加わると、網膜が硝子体に引っ張られて、網膜が剥がれたり穴(裂孔〈れっこう〉)ができます。この裂孔ができると網膜の裏側へ、眼球内部にある水分が流れ込み、剥離部分は急速に拡大していきます。

剥離した網膜の細胞は、短時間で視細胞としての機能を失うため、網膜を復位する手術を早急に施行する必要があります。

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次回はこうした重篤な合併症への対応についてお伝えします。

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